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学習指導の個別化(米軍基地内の学校版)|ラーニングセンターとチョイスボードの利用(教育者向け)

学習者主導型の授業

今、学校にいるのは、Z世代やα世代の子どもたちです。

Z世代:1990年代後半から2010年ごろに生まれた世代

α世代:2010年以降に生まれた世代

Z世代・α世代の子どもたちは、インターネットのなかった時代を知らず、自宅にいながら、独学で、膨大な量の情報を瞬時に手に入れることに慣れています。そんな子どもたちにとって、きちんと並べられた席に静かに座り、先生の話や板書をひたすらノートに書き留める暗記重視の一斉授業など、苦痛でしかありません。

21世紀の学校では、子どもたちのモチベーションを高め、授業への参加を促すために、学習指導の個別化が必須です。

今回の記事では、以前の勤務先である米軍基地内の学校で実施していた

  • 学習指導の個別化
  • 個別化に役立つ2種類のツール・方法
    • ラーニングセンター
    • チョイスボード

について説明します。

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学習指導の個別化(Differentiated Instruction: DI)

米軍基地内の学校ではここ数十年、「学習指導の個別化(Differentiated Instruction: DI)」に力を入れています。

「学習指導の個別化」というのは、「指導の際、学習の①コンテンツ(何を学ぶのか)、②プロセス(どうやって学ぶのか)、③プロダクト(学んだ結果をどう表すのか)、④環境(どんな環境で学ぶのか)について、児童・生徒が自由に選択できるようにすること」です。

例えば、授業中子どもたちは必ずしも椅子に座っている必要はありません。他の子の邪魔にならず、それで学習できるのであれば、立ったままでも、歩き回っても、床に寝そべってもかまいません。

ある先生は、教室のほとんどのテーブルを座卓並みに下げ、子どもたちが座布団に座って学習できるようにしていました。(最初は1つのテーブルだけ「日本コーナー」と称して低くしていましたが、子どもたちの希望が多かったことと、ローテーブル+座布団で学習するほうが、子どもたちが集中できているようだったので、数を増やしたそうです。)

また、別のある教室では椅子の代わりにバランスボールを使っている児童・生徒もいました。

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個別化に役立つツール・方法:ラーニングセンターとチョイスボード

今回ご紹介する「ラーニングセンター」と「チョイスボード」は、学習指導の個別化の中でも、特に②プロセス(どうやって学ぶのか)と③プロダクト(学んだ結果をどう表すのか)と④環境(どんな環境で学ぶのか)にかかわるツール・方法です。

①コンテンツ(何を学ぶのか)については、学習内容は同じですが、教材やアクティビティの難易度を変えることで、個別化に対応させる形をとっています。

学び方は人それぞれ違います。

できれば子どもたち一人ひとりに異なった教材やアクティビティを用意したいところですが、それは不可能なので、どちらのツールでも基本的な学習者タイプに対応した選択肢を用意することが重要です。

子どもたちは、その中から1つまたは複数の教材やアクティビティを、自分の学習者タイプ・好み・能力に合わせて選びます。

自分1人でやるもよし、クラスメートとペアやスモールグループでやるもよし。

成果発表も、口頭で、あるいは筆記で、コンピューターを使うのも、発表を録音・録画して見せるのもありです。

自分で選んだ学習教材・方法なので、子どもたちは意欲的に学習に取り組み、最後まで責任をもってやり遂げたときには達成感も味わえます。

ラーニングセンター

ラーニングセンターサンプル
算数の授業で使えるラーニングセンターのサンプル

ラーニングセンター(Learning centers)は、教室内に作られた小グループ用の学習活動エリアです。

それぞれのセンターには、子どもたちが同じ内容を異なる方法で学べるように、学習者タイプ(学習スタイル)を意識した活動を用意します。

例えば、小学2年生に掛け算を教える際のラーニングセンターには上図のようなものが考えられます。

センターごとの活動内容(例)

各センターでの活動内容は以下の通りです。なお、教師はそれぞれのセンターに難易度の違う教材等を準備しておく必要があります。

  • ブロックセンター
    • おはじきやブロックなどで掛け算を表す。
      難易度を変える方法例:ブロックの種類(2個がつながったもの、3個がつながったもの、1個ずつバラバラなど)を増やす
  • ドリルセンター
    • 掛け算を理解するための練習問題(プリント)をする。
      難易度を変える方法例:①計算の答えを書く②計算式と答え(数字または絵)をマッチさせる③百マス計算のような表④まだ習っていない段の計算にチャレンジ
  • 図書センター
    • お話を読み、掛け算に関連した質問(プリント)に答える。
      難易度を変える方法例:①お話の長さや内容を変える②質問の数やレベルを変える
  • PCセンター
    • 学習ゲームを通じて掛け算を学ぶ。
      難易度を変える方法例:数種類のゲームを使用
  • アートセンター
    • 塗り絵・貼り絵・工作等を通じて掛け算について学ぶ。
  • プレイセンター
    • ①掛け算の歌を聴く・歌う、②音声による指示に従って、掛け算の答えと同数の品物を用意したり答えの書かれたカードを見せる・タッチするなど、身体を動かしながら学習する。
  • ラーニングセンターでの活動は、教師の創造力やアイデア次第で変わります。
  • 1つのセンターで活動する児童・生徒の数は同じである必要はありません。(センターのサイズも同じである必要はありません。)

一般的なラーニングセンターの使い方(例)

  1.  子どもたちを6つ(センター数)の少人数グループに分ける。
  2. 各グループにそれぞれ1つのセンターを割り当てる。
  3. 一定時間の後、子どもたちを(時計回りに)次のセンターへ移動させる。
  4. 一巡するまで3を繰り返す。

米軍基地内のほとんどのクラスに導入されているラーニングセンターでは、子どもたち全員がすべてのセンターを回り、全部の学習活動をすることになっていました。そうすれば、①どんな学習者タイプ(学習スタイル)の子どもも、どこかのセンターで学習内容について学ぶことができるうえ、②学習内容を理解するために大量の活動をするので、知識が定着しやすいと考えられるからです。

けれどこのやり方だと①時間がかかる、②向いていないタイプ・スタイルの活動をしなければいけない、というデメリットもありました。

そこで、私自身は別の形のラーニングセンターを授業に導入していました。

ラーニングセンターの使い方(まなまなバージョン)

  1.  6つ(センターの数)のセンターを2グループ(上図のAとB)に分ける。
  2. 児童・生徒は各グループから1つずつやりたいセンター(学習活動)を選ぶ。
  3. 教師は子どもたちのばらけ具合を見て、各センターの人数がなるべく同じぐらいになるよう、誰がどちらのグループのセンター活動を始めにやるか決める。
  4. 最初のセンター活動を始める。
  5. 一定時間の後、Aグループの子どもたちはBグループに、Bグループの子どもたちはAグループに移動して、自分が選んだもう1つのセンター(学習活動)を行う。

このやり方だと、①学習活動全体に必要な時間は一般的なものより短くて済むが、1人の子どもが1つの活動に費やせる時間は増える、②より学習の個別化が図れ、子どもたちが自分の学習に責任を持つようになる、というメリットがあります。

けれどその一方で、①子どもたちの選択が必ずしもベストな学習方法とは言えない、②子どもたちがうまくばらけないと、各センターのサイズがバラバラになったり、教師が迅速にグループ分けをしなければいけない、というデメリットもあります。

教師の役割

ラーニングセンターを導入した授業をする場合、教師はまずクラス全体に対して、学習内容(上の例なら掛け算)の説明をします。

その後、子どもたちをセンターに移動させ、自主的に学習活動をしてもらいます。(ラーニングセンターを導入した最初の数回は、それぞれのセンターで何をどうすればいいか、手順を説明する必要があります。)

子どもたちが活動を始めた後は、机間巡視をして個々の児童・生徒のサポートや習熟度の確認をします。

または、最初にクラス全体に説明するところまでは同じですが、上述のセンター以外に「コンサルセンター」を用意して、そこに常駐します。

コンサルセンターは特別なサポートが必要な児童・生徒用に使ったり、1人ずつ児童・生徒を呼んで、マンツーマンで習熟度の確認をするのに使えます。

初めてラーニングセンターを導入するときは、センターの数を4つぐらいに押さえておかないと、準備が大変です。

チョイスボード

チョイスボードサンプル
国語の授業で使えるチョイスボードのサンプル

チョイスボード(Choice board)は、学習活動(および成果発表の方法)の選択肢を載せた一覧表のことです。

上のサンプルは国語の授業用ですが、例えば理科・科学の授業用なら、「比較」や「演技」の代わりに「実験」や「ビデオ視聴」を選択肢に入れるなど、教科によって選択肢を変えます。

児童・生徒の主体的な学習が必須なので、どちらかというと小学校の高学年以上向きですし、広範囲の内容を長期的に学習するプロジェクト学習のような授業で使うのに向いています。

教師の役割は基本的に児童・生徒のサポートと習熟度のチェックで、事前の準備もラーニングセンターに比べると圧倒的に少なくて済みます。

最後に

米軍基地内の教室

Z世代・α世代の子どもたちがこれからの時代を生き抜き、さらに成功するためには、すでに身につけている情報検索能力に加え、その情報を分析・応用する能力、批判的思考や問題解決能力といった21世紀型スキル(能力)が必要です。

ラーニングセンターもチョイスボードもそういったスキル(能力)を身につけるのに最適のツール・方法です。

始めは大変かもしれませんが、ぜひ導入を検討してみてください。

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