うちではお気楽姉妹が集まると、必ずといっていいほど「私たち、よく生き延びて、まともに育ったよね~」と笑いながら話します。
母がいわゆる「毒親」と呼ばれるようなタイプだったからですが、私たちが育った(育てられた)昭和の時代には、我が家に限らず、今なら「虐待?」と思えるような育児が普通に行われていました。
今回の記事は、
- 乳幼児の発育に関する基本情報
- 昭和時代の我が家の危ない育児エピソード
- よい大人は決して真似しないでください。
- 現代アメリカの育児
についてです。
今子育てに悩んでいるお父さん・お母さんの息抜きになれば嬉しいです。
子育ての今昔
昔は3世代同居の家庭が主流で、近所とのかかわりも深かったので、子育てを手伝ってくれる人には事欠きませんでした。
子どもの数も多く、兄弟姉妹に限らず、よその子までもが、遊びの中で様々なことを教えてくれる小さな協力者として活躍してくれました。
今は核家族化、少子化が進み、お隣の人ともあいさつを交わす程度の付き合いしかないという家庭が全体の7割以上を占めています。
行政が用意した子育て支援センター等は充実してきましたが、特に共働きの夫婦は「育児情報はもっぱらメディアやネットから」というところが多いのではないでしょうか。
時代の変化とともに、子育ての考え方やあり方が変わるのは当然です。
ただ、一概に「今の子育てのほうが正しい」とは言い切れません。
確かに、子どもの発育にかかわる分野では医学的・科学的研究が進み、「昔の常識が今の非常識」になっていたりもします。
けれど育児において最も大切なことは今も昔も変わりません。
子どもの発育には個人差があり、親にはコントロールのしようがないという事実です。
離乳食
離乳食は、母乳やミルクでは足りない栄養を補うために、赤ちゃんが生後5か月を過ぎるころから始まります。
最近の育児書のおすすめは以下の通り。
かつてはいつだろうと親の決めた時期に断乳(母乳やミルクを一切やめる)するのが主流でしたが、今はだいたい1歳から3歳くらいを目安に卒乳(子どもが自主的に母乳やミルクを求めなくなる)する家庭が多いようです。
初めての離乳食(昭和40年代)
ねぇ、私っていつぐらいから離乳食を食べるようになったの?
あぁ、あんたは前歯が生えそろうのが早かったから、かなり早かった気がするわ。
試しに梨をひと切れ口に入れてみたら、「ガジガジガジ、チュー、ペッ」って汁だけ吸って上手にかすを吐き出してたわ。
ビミョーにじまん気だけど、窒息せずにすんでラッキーだったとしか思えない…。
おむつ外し
昔に比べて、今はおむつが外れるのが遅いと言われます。
一番の原因はおそらくおむつの変化でしょう。
半世紀前、昭和のころは布おむつが、ここ20~30年は紙おむつが主流です。
布おむつ | 紙おむつ | |
メリット | 通気性に優れている 肌にやさしくかぶれにくい 排泄にすぐ気づける | サイズや種類が豊富 吸収力が高い 洗濯の必要なし |
デメリット | 洗濯が大変 漏れやすい | コストがかかる ゴミが増える 排泄に気づきにくい |
要するに、今は汚れたおむつをしていてもそこそこ快適なため、子ども自身がおむつを外す必要性を感じないのです。
20世紀の終わりにアメリカからトイレトレーニングのガイドラインが伝わり、「おむつ外しは子どもがトイレトレーニングに必要な成長段階に至ってから」という考えが広まったことも原因の一つでしょう。
トイレトレーニングに必要な成長段階とは?
(例)
- 排泄にパターンが生まれる
- 尿意が感じられる
- 排泄をある程度コントロールできる
- 簡単な言葉で気持ちを伝えられる
ねぇ、臭いからさっさとおむつ変えてよ!
そんだけしゃべれるなら、「うんち」ぐらい言えるでしょ!
今では、小学校に入学する前までにおむつが外れればいいとまで言われているようですが、なかなかおむつが外れないことに焦りを感じる親御さんは少なくありません。
ただ、だからといって怒るのは逆効果です。
「これがうちの子のペース」という気持ちで気長にその時を待ちましょう。
おむつは外れたけれど…
アメリカの学校には、大人専用と子ども専用のトイレがあり、よほどのことでもないかぎり、大人は子ども用トイレに入ってはいけません。
「そんなの興味ないよ~」と思うんですが、「子どもの性器を見る=性的虐待」を避けるためです。
なので、以前私が勤務していた米軍基地内の小学校付属のプリスクール(4歳児対象)には、入園の条件に「トイレトレーニングの終了」が入っていました。
ちなみにプリスクールには教室内に、男の子用、女の子用の二つのトイレが併設されています。
“Teacher, I need to go poo-poo.”(せんせ~い、うんち行きたい。)
”Okay, you know where to go?”(いいわよ。どこに行けばいいかわかるわよね?)
数分後、トイレの扉の向こうから大声が!
“Teacher, teacher!”(せんせ~い、せんせ~い!)
“What’s wrong?”(どうかしたの?)
“Wipe me.”(ふいて。)
…。
扉が開いたかと思うと、そこにはお尻を突き出した子どもの姿が!
子どもは急いで中に戻って扉を閉めるよう言われ、即座に保護者に電話が行きました。
1歳でおむつ外し(昭和40年代)
い~い、まなまなちゃん。
今日から1歳だし、もうおむつじゃなくてパンツだよ。
パンツの中におしっこやうんちしたら、お尻ぺんぺんだからね。
お尻ぺんぺんはヤダ…。
体罰と強迫…。
この手で我が家は3姉妹とも1歳ちょうどでおむつ外しを完了しています。
余談ですが、子作り計画中だった親により、私とすぐ下の妹は1歳過ぎから祖父母と寝るように仕向けられました。
お母さんたちの部屋にはこわ~いこわ~いお化けが出るよ~。
あなたのほうがよっぽど怖いです。
歩行
以前は、子どもが早く歩き出せるようにと、歩行器を使って歩く練習をさせる親御さんがたくさんいました。
けれど、今は歩行の補助と言うより、「乗せると喜ぶ」おもちゃのような感覚で使う家庭が多いように思います。
実際、赤ちゃんが歩けるようになるのは、いくつかのステップを踏んで、歩行に必要な筋肉が十分に発達したからです。
- 寝返り:生後4~7か月
- ずりばい・はいはい:生後7~10か月
- つかまり立ち:生後8~11か月
- 伝い歩き:生後9か月~1歳
そして、「だいたい1歳半ごろにはひとりである程度うまく歩けるようになる」と、ほとんどの育児書には書かれています。
けれど、こういった数字はあくまでも平均値でしかありません。
1歳2か月になる息子のことなんですが、まだつかまり立ちがやっとという感じです。
発達障害とかではないようなんですが、どうすれば歩くようになるんでしょうか。
よその子に比べて自分の子の歩き始めが遅いと、劣等感とか焦りのようなものを感じるかもしれません。
でも、病気とか障害じゃないのなら、無理に歩かせようとしなくてもいいんじゃないでしょうか。
発育が早かったつけ(昭和40年代)
私は「はいはい」をほとんどせず、生後8か月のころには歩き始めていたそうです。
そのせいで筋肉が十分発達していなかったのか、幼いころに2度大けがをしています。
1.両脚の皮ずるむけ
たしか3歳前後だったと思いますが、私はよく祖父のカブ(バイク)の荷台に乗せてもらっていました。
危ないから、ちゃんと脚を開いておくんだぞ。
うん、わかった。
頭ではわかっていても、脚の筋肉は言うことを聞いてくれません。
両脚ともタイヤに巻き込まれ、骨折こそしませんでしたが、ひざ下の皮がずるむけになりました。
おそらく違法なことをした罰が当たったんでしょう。
しばらくの間、私の移動は全部祖父のおんぶだったそうです。
2.ベランダからの転落
早く歩き回れるようになると、それだけ親の目の届かないところいく可能性が上がり、危険にも巻き込まれやすくなります。
親の目を盗んだ私は、お隣の2階のベランダに上がり、そこからコンクリートの地面に落下しました。
幸いなことに、私が落ちたところにだけ、飼っていたヤギにやろうと麦わらが積んであり、それがクッションになったため、額を切ったくらいのけがで済みました。(約1センチくらいの傷跡がいまだに残っています。)
そんな風に考えると、歩きだすのが遅いのは、実は親孝行かもしれません。
ちなみに、はいはいをしなかったつけは大人になっても現れます。
私の場合、中・高とやっていたバレーで腰を痛め、20代前半で椎間板変性症(椎間板が硬くなり、クッション性が失われて変形し、腰痛を引き起こす症状)になりました。
アメリカ人に人気だったベビーシューズ
「ピッピッ」と音が出るのが楽しくて、思わず足を踏み出してしまう。
私も子どものころに喜んではいていましたが、どうやらアメリカには音の出るベビーシューズがないようで、プレゼントしたら大喜びされました。
おしゃべり
ことばの発達にも、歩行開始までと同じように、いくつかの段階があります。
- クーイング(「あー」「うー」):生後1~3か月
- 喃語(「ばばば」「まんまん」):生後5か月~
- 1語文(「わんわん」「だっこ」):生後1歳~
- 2語文(「ぶーぶー、のる」「くっく、やー」):生後2歳~
もちろんこちらもあくまでも目安で、これより数か月も早い子もいれば、遅い子もいます。
ただし、それでもどうにかならないかと悩むのが親というもの。
そこで、赤ちゃんのおしゃべりを促すおすすめの方法が
- 読み聞かせ
- 親子のコミュニケーション
- 同年代の子どもとのコミュニケーション
です。
赤ちゃんに限らず、言葉を覚えるにはまず聞かなくてはなりません。ただし、言葉を教えようとするのではなく、スキンシップや遊びを通して生まれる感情と言葉が結びつくようにすると、自然に言葉への興味がわきます。
また、同じくらいの年の子どもと一緒に過ごすと、大人たちから得るのとは異なる刺激を受け、おしゃべりのきっかけになります。
口から生まれた私(昭和40年代)
私は話し始めるのが早く、1歳の誕生日には「ハッピーバースデー」の歌まで歌っていたと聞いています。
始めはおしゃべり上手な娘を自慢に思っていた母ですが、私が3歳になるころにはコロッと態度が変わります。
ちょっと、何でそんなに余計なことばっかりべらべらしゃべるの⁉
近所でなんて言われてるか知ってる?
「年は3つで、かば30」よ!
これからは口を抑えときなさい。
そうすれば出っ歯も直るかもよ!
年は3つで、かば30
まだ3歳なのに、30歳並みに偉そうな口を利くこと。
「かば」は出雲弁で「かばち(減らず口)」の意味。
『まなまなFamily語録』より
ひどい…。
おしゃぶりをしてると歯並びが悪くなるって本当?
おしゃぶりは、もともと指しゃぶりをやめさせるために欧米で広まったようですが、
- 赤ちゃんが安心する
- 哺乳力が高まるなど、口の発達が期待できる
- 鼻呼吸を促す
といったメリットがある反面、
- くせになり、やめさせるのが大変
- 親子のスキンシップやコミュニケーション不足を招く
- 歯ならびやかみ合わせが悪くなる場合がある
- 発語が遅れる
のようなデメリットがあると言われています。
ただし、口の発達や、鼻呼吸の促進、歯列不正に関しては、専門家でも意見が分かれています。
しつけ
米軍基地内の周遊バスに乗っていた時のことです。
どうやらこれからプールに行くらしく、興奮した子どもが前の座席の背を靴でガンガン蹴っていました。一緒にいたお母さんが繰り返し、
“Will you stop kicking, please?”(「お願いだから、蹴るのをやめてくれる?」)
と、丁寧に諭しますが、子どもは一向にやめようとしません。
すると、プールまでまだ距離があったにもかかわらず、ふたりは次のバス停でバスを降りていきました。
まさにアメリカ的な叱らないしつけです。
アメリカ流叱らないしつけとは?
- 問題を起こした子どもと話すときは怒鳴らず、ただしきっぱりと丁寧な口調で
- 体罰は一切禁止
- 問題行動には、まずは親子ともにクールダウンができるタイムアウトで対処
- 問題を起こしている場所から子どもを連れ出す・遠ざける
- 一定の時間、子どもを特定の場所で一人で過ごさせる
- 「親の言うことは絶対!交渉の余地なし」を幼いときから徹底させる
日本でも近頃叱らないしつけがはやっているようですが、より正確に言えば、叱れない・叱り方がわからない、しつけのできない親が増えているだけのような気がします。
そもそもしつけとは、誰もが安全で快適な集団生活を送るために守るべき社会ルールや規則、礼儀作法や習慣を身につけさせることです。
アメリカ流のしつけからもわかるように、叱らないしつけでは、怒鳴ることこそしませんが、確実に子どもに悪いことは悪いと分からせます。
昔のように子どもを言葉やこぶしで痛めつけるのはご法度ですが、優しく「そんなことしちゃだめだよ~」というだけで、子どもがしつけられると思いますか。
悪さをしたら(昭和40年代)
50年以上も前のことなので、いったい何をしたのかは定かでありませんが、うちでは何か悪さをすと必ず「ねずんなず」に入れられました。
ねずんなず(出雲弁)
ネズミが入らないように工夫された、お米や乾物などの保管庫。大きさは畳2畳分ほど。スライド式の重い扉は、外からは横木に手をかけて開けられるが、中からは一切の引っ掛かりがないので開けられない。
標準語では「ねずみいらず(鼠入らず)」(ネズミが入らないように作られた食器棚)。
よく似た言葉に「はいらず」(食事を一時的に保存するための棚。標準語だと「ハエ入らず」)がある。
『まなまなFamily語録』より
真っ暗で、お化けが出そうな空間に、初めて入れられたときは散々泣いて「もう悪いことはしない」と誓いましたが、そこに買い置きのお茶菓子があることに気づいてからは別です。
その頃にはすっかり暗さにもビビらなくなっていたので、仕返しにお菓子を食べまくったところ、2度とねずんなずには入れられなくなりました。
間違いなく、私は悪知恵の回る子でした。
最後に
子どもの発育には個人差があり、周りの環境やその子の性格によっても違いが出ます。
育児ガイドに載っているのはあくまでも平均であり、目安です。
病気や障害が原因でないのなら、「平均よりも遅れてる?」と焦ったり悩んだりするより、ド~ンと笑顔で構え、思いっきりお子さんとのスキンシップとコミュニケーションを楽しんでください。