あなたのお気に入りの話(映画や小説)は何ですか。その話の最初の場面を思い浮かべてください。いったい何があなたを「この先も見たい、読みたい」と思わせたのでしょうか。
「心に響いた」「身近に感じた」「疑問がわいた」「笑わされた」
それが何であれ、オープニングで心を動かされなければ、おそらく最後までその話に付き合おうとは思わなかったはずです。出だしが肝心。これは何も映画や小説に限ったことではなく、あらゆる発表の形式・場面に言えることです。
今回は、学習者の心をつかみ、最後まで話を聞きたいと思わせる授業をするための11のオープニングアプローチをご紹介します。簡単に応用できますので、プレゼンやスピーチ、自己紹介が苦手という方にも一読をお勧めします。
五感を刺激する
学習内容に関係のある、視覚、臭覚、聴覚、味覚、触覚に訴えるものを利用します。
例:「様々な職業について学ぶ」授業で、「あさいちばんはやいのは」「与作」「農家の歌」「闘え!サラリーマン」などの歌をそれぞれ数十秒ずつ流し、全部の歌に共通していたものは何か(職業)答えさせ、その後それぞれの仕事の違いについて考えさせる。
サプライズを仕掛ける
予想外のものや行為で、学習者を「あ!」「えっ!?」と驚かせたり、不意を突いたりします。ただし、ネガティブなサプライズは後味が悪いので、却下。
例:「突然ですが、今日は先週の最優秀グループのみんなに賞品を持ってきました。」
ご褒美系のサプライズは何度もやると効果が薄れるので、多くても学期に一度程度に抑える。
疑問や謎を提示す
人は不確かさや不安定なものに対して居心地の悪さを感じ、未完のものは完成させようとします。その特性を生かして、学習者にミステリーの謎解きのような要素を与えます。
例:授業の始まりに「いいと言うまで開けてはいけない」と前置きして、学習者に封筒を渡す。中にはあとで行うアクティビティに使うものを入れてもいいし、何も入れなくてもいい。または中身のわからない箱を教壇に置いておき、学習者に聞かれてもなぜ箱がそこに置かれているか理由は説明しない。こちらも中身は入っていてもいなくてもよい。
プライベートな話題を披露する
子どもは大人のやらかした失敗談や恥ずかしい話を聞くのが好きです。作り話でも構わないので、学習内容に関連付けた個人的なエピソードを語り、学習者に秘密を共有している気分を味わわせます。
英語の授業でのエピソード例:アメリカ人とゴルフゲームをしていた時に、”Your turn.”と言われたので、その場で一回転したところ、怪訝な顔をされた。その後、ミニパターを渡され、立ち位置を指さされて、ようやく”Turn”に「順番」の意味があると学んだ。
できれば「失敗は成功のもと」と思えるようなエピソードを選ぶこと。
日常生活に関連付ける
学習意欲を高めるために、教材として学習者にとって身近なもの・事柄を活用します。
例1:スマホ・携帯電話会社数社の料金プランが載ったパンフレットを渡し、特定の条件下(電話よりメールを多く使う、同じ機種間のやり取りが多いなど)で、どの会社のどのプランが一番お得か調べる。
例2:通勤・通学電車の混雑の問題について提示する。
ユーモアを交える
笑いやユーモアには人々の緊張をほぐし、相手に親しみを覚えさせる効果があります。学習内容に絡めたユーモアあふれる言動で学習者の関心をひき、一気に本題へと持ち込みます。
例1:ウケなくてもいいので、本題につながるダジャレやジョークを言う。
例2:ある外国について学ぶ際、その国の民族衣装っぽい服装で教室に現れる。
動作を促す
「百聞は一見に如かず、けれど百見は一験にしかず」で、実際に身体を動かすと、より物事に集中でき、そこから得られる学びも最大になります。学習者を机や椅子から離す活動から始めるのがこのアプローチです。
例1:「4つのコーナー」を導入に使う。
例2:方向やボディパーツに関する英単語を学ぶ際、「Hokey-Pokey」を踊る。
矛盾を突く
世間一般で言うところの正論に対してあえて逆説を唱えたり、2つの相反する事実を提示します。これは「疑問や謎を提示する」アプローチ同様、矛盾がもたらす違和感や不安定感によって好奇心が刺激されるという心理的作用がもとになっています。
相反する事実の例:「カビは人体に害を及ぼす」と「たくさんの薬がカビから作られている」
禁忌を破る
「ダメ!」と言われると余計に手を出したくなるのが人の性。『鶴の恩返し』でも『浦島太郎』でも「開けてはいけない」と言われた障子や箱を開けてしまった登場人物たちのように、何かを禁止されると、逆に学習者の意欲が掻き立てられます。
例:「今日の授業のことは決して家で話してはいけない」と前置きした上で、物質の状態変化について説明し、例として冷蔵庫を使わずにアイスクリームを作る方法を教える。
想像させる
学習内容に関わりのある「もし~だったら」という状況を想定して、学習者にその様子を想像させます。
例:自然と人間の関わり方についての授業を、「もし今学校の裏山で大規模な土砂崩れが起きたら、どうなるか考えてみてください」と言って始める。
修辞疑問を投げかける
学習者に答えてもらうためではなく、自分の言いたいことを強調するために、わざと疑問文の形で話を始めます。ぶつぶつ言うのとは違いますが、学習者が思わず「独り言?」と勘違いしてしまうような感じと言えばいいでしょうか。たとえ答えを期待されていないとわかっていても、学習者の脳は疑問が呈された瞬間、答えを探そうと無意識のうちに動き出します。
例:ある特定のトピックについての複数の疑問を、学習者が口をはさめないよう矢継ぎ早に繰り出し、その後しばらく沈黙する。(沈黙は学習者に考える時間を与えるため。)
もう1つのオープニングアプローチ
ここまで11個のオープニングアプローチを紹介してきましたが、あなたの児童・生徒(または聞き手)に一番効果的な方法はどれだったでしょうか。
もちろん、どれか1つを選ばなければいけないわけではないので、11個のアプローチを全部、またはいくつか代わるがわる試してみるのもいいでしょう。
また、12番目のアプローチとして、上述の11個のアプローチの中から、学習者や学習内容に合ったものをいくつか自由に組み合わせて、オリジナルのアプローチを試してみるのもお勧めです。
「オープニングでは学習者の心をつかむのに成功したが、最後までその状態を保てる自信がない」という方は以下の関連記事をご覧ください。
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