「人間は社会的動物である」という有名な言葉があります。
私たちは社会を作り、その中で暮らす生き物です。社会には当然たくさんの人がいます。そして周囲の環境や状況に適応するため、外向きの仮面(ペルソナ)をかぶっています。
「ペルソナをかぶる=社会性を身につける」と考えれば、人として成長したように思えるかもしれません。けれど、そのせいで息苦しくなったり、内側にいる本当の自分を見失ってしまったのでは元も子もありません。
今回は、現状に満足していない、または将来に不安がある人向けに、ストレスを軽減し、より充実した人生を送るのに役立つ自己発見のためのツール・アクティビティと、思わぬ落とし穴について紹介します。
この記事を読むと分かること
- 「自己発見」とは?
- 自己発見に役立つ無料のセルフツール・アクティビティ
- 自己発見の落とし穴
自己発見とは

自己発見とは、ペルソナの奥にある自分自身について学び、本来の自分を見つけるプロセスを指します。
個人の心理的安定や成長において重要な意味を持ち、充実した人生を送るための鍵となりうるものです。
3つの段階(ステージ)
自己発見のプロセスには3つの段階(ステージ)があります。
- 第1ステージ:外向きの自分の特性について学ぶ
- 第2ステージ:自覚していなかった自分について探る
- 第3ステージ:本当の自分になる
第1ステージ:外向きの自分の特性について学ぶ
第1ステージは、表面に現れている自分自身の特性について学ぶ自己理解の段階です。
自分の性格タイプ(長所や短所、強みや弱み)、価値観(常習的な行動の根底にあるもの)、原動力(自身を駆り立てるもの)、欲求や願望を明らかにし、それをそのまま受けとめます。
第2ステージ:自覚していなかった自分について探る
第2ステージは、過去の体験や経験、無意識の世界を通して、自分では自覚していなかった自分自身について知る自己認識と自己分析の段階です。
心の奥に根付いた幼少期のトラウマに対処したり、夢に注意を払うなど、自身の内面世界を探索し、内省することで、より深いレベルで自分自身を知ることになります。
この段階では、第1ステージで理解したアイデンティティ(自己)にブレが生じるでしょう。
第3ステージ:本当の自分になる
第3ステージは、本当の自分を現実のものにする自己実現の段階です。
この段階で最も重要なのが心の安定です。
外的な障害や過去のわだかまりを消化し、本来の自分の能力や可能性(個性)を最大限発揮します。
期待できる効果
自己発見は、なによりもまず私たちに自分が変わるきっかけを与えてくれます。
あるがままの自分を受け入れることで、自己肯定感が育まれます。
自分の能力や性格、置かれている状況を正確に把握できれば、よりよいキャリア形成や人間関係の構築に役立ちます。
そしてこれらすべての相乗効果で、ストレスが軽減され、明確な目的意識と自信をもって前に進むことができます。
自己発見に役立つ無料のセルフツール・アクティビティ

*以下のツール・アクティビティは自己責任でお試しください。
性格診断
「自己発見ツール」と聞いてほとんどの人が思い浮かべる性格診断は、第1ステージで役立ちます。
人気がある性格診断に、
があります。
価値観診断
価値観と言っても、仕事に関するもの、恋愛に関するものなど対象は様々です。
「価値観診断・価値観テスト」等で検索すると、たくさんの価値観診断・テストがヒットしますが、総合的な価値観診断でおススメなのが、無料オンライン診断「RESUMY価値観診断」です。
マインドフルネス
マインドフルネスは、評価や判断をせずにありのままを受け入れる心理的な状態を表しており、自己を客観的に見つめるのに役立ちます。
トラウマ開放エクササイズ
第2ステージでは過去を振り返って心の奥底を覗くため、様々なトラウマ(心の傷)に遭遇しますが、第3ステージに進むためには、このトラウマに対処する必要があります。
デイビッド・バーセリのトラウマ解放エクササイズ(TRE)

右下の「歯車アイコン(設定)」→「字幕」→「自動翻訳」→「日本語」とクリックすると、日本語の字幕が出てきます。
夢分析
心理学者のユングは夢を「その人が抱える心理や問題を表したもの」と考えました。
一見脈絡のなさそうな夢でも分析していくと、深層心理が見えてくる可能性があります。
やり方:
- 夢日記をつける:覚えていることだけでいいので、ロケーション・登場人物・色・音・感情などできるだけたくさん記録します。
- 夢の元型やキーワード事典を参照する:自分なりに夢の分析、解釈を行います。
- 自分の心理状態と照らし合わせる:特に夢の告げる内容と現在の心理状態がマッチしていない場合、改めて自分の心の奥底を見つめなおすことで、新しい気付きがあるかもしれません。
- 以前見た夢との関連性を考える:私たちの心は常に何かを感じ続けています。以前見た夢との関連性を考えることで、自分の心の動きが見えやすくなるでしょう。
- 総合的に夢を分析する:以上を踏まえ、自分の現在の心理状態を判断します。
取扱説明書
自分の取扱説明書の作成は、自分自身を客観的に捉え、それを言語化するのに役立ちます。

自分の取扱説明書には、一般の製品の取扱説明書に記載されているように、
- 製品情報・仕様:自分の基本情報・スキル・趣味・特技・強み・長所等
- 用途と使用方法:どんな時に役に立つのか・どういう使い方をされると嬉しいのか等
- 禁止事項・使用上の注意:してほしくないこと・苦手なこと等
- メンテナンスの時期と方法:調子が悪い時の見分け方・不調な際どうすれば気分がよくなるか等
を記載します。
*上のテンプレートはこちら(Canva)をクリックしたのち、file➞downloadでダウンロードできます。また、サインイン(ログイン)し、file➞make a copyでテンプレートのコピーを作れば、枠内に書き込みもできます。
*Google アカウントがある人は、上のテンプレートを3分割したGoogleスライドのコピー(書き込みが可能)をこちらから入手することも可能です。
思わぬ落とし穴

個性的であることと身勝手にふるまうことの違い
第3ステージの項で述べた「自己実現(外的な障害や過去のわだかまりを消化し、本来の自分の能力や可能性(個性)を最大限発揮すること)」は「他者を否定し、自分の望み通りにふるまうこと」ではありません。
本当の自分を見つけた人は、個性的であっても身勝手ではありません。
そこをはき違えると、人間関係を悪化させ、社会の中で孤立化してしまう危険性があります。
ネガティブな発見にとらわれる
発見した自分の中には、見たくなかった自分、受け入れがたい自分がいるかもしれません。
自己発見のプロセスでは、あるがままの自分をそのまま受け入れ、客観的に分析することが求められますが、そういう作業が苦手な人がコンサルタントやコーチなしに自分だけで自己発見を旅を始めると、ときに劣等感や自己嫌悪の感情に飲み込まれてしまうことがあるので要注意です。
自己発見のすばらしさに取りつかれる
先ほどセルフで自己発見の旅を進めるリスクをあげましたが、コンサルタントやコーチのいるセミナー等を受講することにもリスクがないわけではありません。
実は先日、知り合いの知り合いから自分が参加した自己発見セミナーの無料説明会に参加しないかというお誘いの連絡がありました。
「説明会に参加すれば、自己発見のすばらしさをもっとよく知ることができて、セミナーにも参加したくなると思う」
「セミナーはオンラインで参加できて、1週間で17万円ほど」
「自分が好きなれるし、人生の目標を達成する指針を示してくれる」
「疎遠だった兄弟と話をするようになれたのも、セミナーで自分のトラウマに気づけたから」
「私の変化を見てうちの旦那もセミナーに参加することに同意してくれたし、今は子どもたちにも勧めているところ」
結局、夜の12時前から2時半過ぎまで話を聞きましたが、連絡してきた本人の喜びに反して、その人のことが心配になりました。
そこで、共通の知り合いに連絡を取ったところ、何人もの近しい友人に自己発見セミナーを勧め続けたせいで、今ではそのほとんどから付き合いを絶たれていることが判明しました。
自己発見セミナーに参加したおかげで、確かにその人は自分についての新たな発見をたくさんし、物事をポジティブに捉えることができるようになったようですし、何よりも以前より幸せになったと言っていました。
けれど、自己発見セミナーに取りつかれたというか、洗脳されたように感じたのは私だけではないと思います。
パワフルなコンサルタントやコーチのいる自己発見セミナーは、自己肯定感が極端に低い人、感受性が強すぎる人には向いていないのかもしれません。
まとめ
自己発見は、自分について深く知り、個を実現するプロセスであって、ゴールではありません。
また、自己発見のプロセスは一夕一朝で完了するものではありませんし、1度やればそれで終わりというものでもありません。
心の奥に秘めていたかさぶたをはがしたせいで、痛みを感じることもあります。
人によっては思わぬ落とし穴に落ちることもあります。
それでも、ストレスを軽減し、より充実した人生を送るための方法を探しているなら、自己発見の旅を始めてみませんか。