21世紀社会で成功するのに必須の問題解決能力。
今回は、どうすれば部下や児童・生徒の問題解決能力を育てたり、高めたりできるか、実践をもとに説明します。
最近はやりの「自分で考えられない」モンスター新入社員の教育にもおすすめです。
問題解決能力とは
問題解決能力は、「問題を解決できる能力」と一言で片づけられるようなものではありません。
- 問題は何か、何が原因か把握する(客観性・分析力)
- 解決策について情報を収集し、考える(調査力・批判的思考力)
- 実際に解決策を試してみる(自発性・行動力)
- 試した結果を評価し、必要に応じて改良を加える(柔軟性・調整力・応用力)
これらすべてひっくるめた能力が、いわゆる21世紀型スキルの1つである問題解決能力です。
20世紀型の教育・指導法
誰かに何かを教えようとするとき、たいていの人は自分が教わったように教えようとします。
新卒の教師を除いて、指導的立場にいる人のほとんどは、20世紀型の教育を受けた人たちですが、その20世紀型教育では、①講義・説明中心の授業、②学習は受動的、③記憶力重視の学力評価が一般的でした。
しかも児童・生徒が成功しないのは、努力と根性が足りないのであって、指導の仕方に疑問をはさんだりはしません。
もちろん20世紀型教育には20世紀型教育の良さがありますが、ある意味、21世紀型教育とは正反対の教え方です。
そして、残念ながら自分が教わったように教えたのでは、学ぶ側に21世紀型スキルを身につけさせることはできません。
では、どうすればいいのでしょうか。
問題解決能力を育て・高める指導法
ここで紹介するのは、私が新任教員研修をした際に使った方法ですが、どんな授業や研修にも簡単に応用できます。
研修はいつもオープンエンド(答えが1つに限定されない)の質問から始めます。
今週はどうでしたか?
先週F先生がシェアしてくださった活動をやってみましたが、子どもたちに大人気でした。でも、みんなそればかりやりたがって、結局予定していたほかの活動ができませんでした。
どうすれば予定通りに授業を進められるんでしょうか?
この新任研修ですが、週に1度、オンラインで行っていました。前年に同じ研修を受けた2年生教師とベテラン教師数名(F先生もそのうちの1人)も「力になれれば」と国内の他の地域からボランティアで参加してくれていました。
ところで、先を続ける前に質問です。
あなたが指導者なら、新任教師の質問にどう対処しますか?
① 指導者として、予定通りに授業を進めるためのコツを伝授する。
② その活動をやったことがあるF先生に、どうやって予定通りに授業を進めたのか説明してもらう。
③ 研修に参加しているすべての先生に意見を求める。
正解は「質問に質問で返す」です。
どうして予定通りに進まなかったと思いますか?
どうして予定通りに進ませないといけないのでしょうか?
どうすれば予定通りに進められると思いますか?
上の①~③の対処法は20世紀型です。親切ではありますが、相手に考える余地を与えていません。
一方、質問に質問で返すのは、一見不親切でありながら、実は相手に問題解決能力に必要な分析力や思考力、臨機応変に対応できる柔軟性などを求めています。
こういった指導のされ方に慣れていなかった新任教師は、始めはこちらの質問に対して「どうしてでしょうか?」「どうすればいいのでしょうか」と、さらに質問をしてきました。
けれどこちらから答えが得られないとわかってからは、まず自分なりに考えたり、調べたりするようになり、最終的には解決策を試すまでになりました。
実際、まだまだ調査力は未熟でしたし、原因の分析が間違っていたり、試した解決策では問題が解決しなかったりしましたが、大切なのは問題解決に向けて自発的に行動する習慣がついたことです。
指導する相手がそうなって初めて、先ほど不正解にした①~③、つまり先人の知恵を提供します。そうすることで、解決策の選択肢が増えるからです。
ただし、そこで得た解決策をそっくりそのまま自分の問題に当てはめても、たいていはうまくいきません。
本当に問題解決能力が身に付いたのであれば、自分の性格や状況に合わせて調整できるはずです。
まとめ
学習者や社員の問題解決能力を養成するには、指導者側が何かを教えるのではなく、適切な質問を投げかける必要があります。
適当な質問とは、
- 問題は何か、何が原因か把握させる(客観性・分析力)
- 解決策について情報を収集し、考えさせる(調査力・批判的思考力)
- 実際に解決策を試させる(自発性・行動力)
- 試した結果を評価し、必要に応じて改良を加えさせる(柔軟性・調整力・応用力)
ことを、学習者や社員に促すオープンエンドの質問になります。