誰かと知り合いになったばかりのころ、相手に血液型をきかれたり、きいたりしたことはありませんか。
おそらくきいた人は血液型性格診断のことを知っていて、それで相手の性格を大まかにつかもうとしたのではないでしょうか。けれど、人の性格がたったの4種類に分けられるものなのでしょうか。もしかするとその診断を信じたせいで、対人関係で損をしたり、トラブルに巻き込まれているかもしれませんよ。
今回の記事では、
- なぜ日本人には血液型診断を安直に受け入れている人が多いのか
- 血液型の違いとは?知っておくとどんな役に立つのか
- 血液型性格診断からくる思い込みが、対人関係にどんな弊害をもたらすか
について考えてみたいと思います。
血液型性格診断
ここで言う血液型性格診断というのは、人をABO式の4タイプに分け、タイプ別に特定の性格的共通点があるとして、各タイプに属する人にどんな行動パターンが見られるか、どんな適性があるのか、さらにはどんな人と相性がいいのかわるいのかなどについて提示したものを意味します。
よく見かける血液型別の性格的特徴は、
- A型:几帳面、気遣いができる、神経質
- O型:おおらか、聞き上手、大雑把
- B型:好奇心旺盛、独創的、自己中心的
- AB型:冷静沈着、感受性が高い、二重人格
あたりではないでしょうか。
血液型の種類と日米比較
日常生活の中で血液型の違いが重要になるのは、実は心理学や行動学の分野ではなく、医学の分野においてです。
そこで、まず日本人の血液型の種類と割合について調べてみました。
日本人の血液型
一般に血液型は、ABO型とRh式を組み合わせて、8種類に分類されます。
2022年現在の日本人の血液型の割合は以下の表のようになります。
O型 | A型 | B型 | AB型 | |
Rh(+) | 29.9% | 39.8% | 19.9% | 9.9% |
Rh(-) | 0.5% | 0.2% | 0.1% | 0.05% |
自分の血液型を知っておくこと、それを周囲の人たちに知らせることのメリットは、運悪く輸血が必要になった時に、迅速な対応が期待できることです。というのも、基本的には同じ血液型の人同士でしか輸血ができないからです。
基本的と書いたのは、超緊急時にはO型の血液をほかの血液型の患者さんに輸血することがあるからです。第二次大戦に看護兵として従軍した私の祖父は、血液型がO型だったため、しょっちゅうほかの血液型のけが人に輸血していたと話していました。
また、Rh式では、(+)の人はどちらの型からの輸血もOKですが、(-)の人は同じRh(-)の人からしか輸血を受けられないそうです。これについては45年くらい前に大ヒットした、山口百恵・三浦友和主演のドラマ「赤い○○シリーズ」で初めて知りました。(40代以下の人は知らないですよね。)
アメリカ人の血液型
日本人と違い、アメリカ人は自分の血液型を知らない人のほうが多いです。
以前、同僚や友人のアメリカ人に血液型をきいた際、「知っている」と答えたのは、「出産時に教えてもらった」という女性と「珍しい血液型だから、子供のころから知っている」というRh(-)AB型の男性だけでした。(女性のほうの血液型は思い出せませんが、男性のほうは「百恵ちゃんと一緒だ」と思ったので、しっかり覚えています。)
もちろん、血液型性格診断など、アメリカ人の話題には上りません。だからこそ日本人の血液型の割合と比較してみるのも面白いんじゃないかと思い、調べてみましたが、血液型に興味がない人が多いせいか、ネット上に情報が少なく、データを見つけるのに苦労しました。
O型 | A型 | B型 | AB型 | |
Rh(+) | 37.4% | 35.7% | 8.5% | 3.4% |
Rh(-) | 6.6% | 6.3% | 1.5% | 0.6% |
日米のデータ比較
日本人とアメリカ人の血液型の割合を比べると、
- 日本ではA型、アメリカではO型の割合が一番高い
- 両国ともAB型の割合が一番低い
- Rh式では(+)が圧倒的に多い
ことがわかります。
また、Rh(-)に限って言えば、アメリカのほうが発現率が高いこともわかりました。しかし、私の友人より百恵ちゃんのほうが、輸血を受けにくいのかと聞かれると、一概にそうとは言い切れないようです。
ご存じのように、アメリカは多人種が入り混じった国です。血液型の割合も、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、アングロサクソン系(コケイジャン)と人種ごとに異なります。
アメリカ全体で一番割合の低いRh(-)AB型の人種別の割合は、アフリカ系:0.3%、ヒスパニック系:0.2%、アジア系:0.1%で、コケイジャンでは1%になります。また、同じ血液型でも人種により抗原が異なるため、輸血となると、同じ人種の人からでないと、処置後に合併症を発症するリスクが高くなるそうです。(American Red CrossのHPより)
血液型性格診断が廃れない理由
ところで、科学の世界では、ある特定の2つのことがらに相関関係があることを証明できても、ないことを証明するのは不可能なのだそうです。できることと言えば、
- 「2つの事柄には相関関係がある」という仮説を立て、
- それについての調査データを収集し、
- 集まったデータを分析して、
- 「仮定が否定された」と指摘する
ことぐらいです。
実際のところ、1991年には日本で、2000年以降は海外でも、血液型と性格の関連性に関する調査が行われ、データ分析がなされた結果、血液型と性格の間に相関関係があることは、繰り返し否定されています。しかし、それでも科学が科学であるがゆえに、これら2つのことがらに相関関係がないとは証明できないのです。
では、日本で血液型性格診断が廃れないのは、この科学的ジレンマが原因なのでしょうか。
それこそまったく科学的根拠のない考察ですが、私は日本人の国民性が関係しているのではと考えています。
日本人は、幼いころから集団行動の必要性を教えられて育ちます。そのことは小学校体育の学習指導要領解説や指導の手引きに「集団行動」の項目があることからも明白ですが、そのせいか、日本人は何らかの集団に所属して安心・安定感を得たいという欲求が強い国民のように思えます。
「集団(グループ)=安心・安定」ならば、「バラバラ=不安定」です。また、グループを作るにはそこに属するものに何らかの共通項が必要です。だとすれば、日本人は、とにかくバラバラの中に共通項を見つけ、十把一絡げにグループ分けすることが好きな国民と捉えることはできないでしょうか。
そもそも複雑な人間の性格をたった4つに分類することには無理があります。しかもその共通項である性格的特徴には、科学的根拠もありません。しかし、日本人にとって大切なのは、共通項ではなく、グループ分けされているかどうかです。血液型性格診断が廃れないのは、それが日本人に安心・安定感をもたらしてくれるものだからなのでしょう。
思い込みや決めつけの危険性
誰かに血液型をきく理由が献血のためなら、弊害どころか医療に貢献できるので、問題ありません。しかし、相手のことをよく知りたい、どんな人なのか見極めたいと思って血液型をきくのは危険です。
例えば、自分はA型、相手も同じA型だと答えた場合、声に出して言うかどうかはともかく、
「あ、私も。なんか気が合いそう」
「うそ、なんかA型っぽくないな」
のように感じるのではないでしょうか。一方、自分がA型以外の血液型だった場合はA型の相手のことを、
「きっとまじめで几帳面なんだろうな」
「もしかして几帳面?」
「うわっ、疲れそう」
「へぇ、そうなんだ。どうりで私とは合わないと思ったわ」
という感じでしょうか。
もうお気づきだと思いますが、こういった反応はどれも血液型性格診断をもとに、自分がこうだろうと思い込んだA型像に、勝手に相手をあてはめた結果です。もしその相手が、あとになって実はA型ではなくほかの血液型だとわかったら、また自分の都合のいいように相手の性格を決めつけるのでしょうか。
血液型を知ったからといって、相手のことを本当に理解したことにはなりません。思い込みと決めつけのせいで、相手と深く知り合おうともせず、結果的に生涯の友や運命の人だったかもしれない相手をみすみす逃していたとすれば、残念な話です。
ブラッドハラスメント
残念で話が終わればいいのですが、この思い込みと決めつけが嫌がらせにつながることがあります。
嫌がらせというと、パワハラ、セクハラ、モラハラあたりを思い浮かべる人が多いと思いますが、最近ではブラハラという言葉も聞くようになりました。ブラッドハラスメントの略で、血液型を理由にした差別的な行為のことです。
さきほど 血液型をきいたときに返ってくる反応について、いくつか例をあげましたが、その大半は相手にとって不快に思われかねないものばかりです。言っている(または言わなくても無意識のうちにしぐさや表情に現してしまっている)本人からすれば、別に悪気はないのでしょうが、ハラスメントになるかならないかは、あくまでも相手がどう受け取るかで決まります。
気づいたときにはもう、職場の人間関係がドロドロになっていた、なんてことにならないよう、血液型性格判断に基づいた思い込みと決めつけからくる言動には十分注意してください。
おまけ
最後に私自身が受けたブラハラ的発言について紹介します。ちなみに私は好奇心旺盛、独創的、自己中心的とされるB型です。
1.職場の年上の同僚(A型男性)との会話
同僚:「まなまなさんって、確かB型だったよねぇ」
まなまな:「あ、はい」
同僚:「彼氏いるの?」
(B型と彼氏にどんな関係があるんだろ。っていうか、これって聞く相手が悪かったら、セクハラにも取られかねない発言だよな。まぁ、私は気にしないし、ここはサービス精神旺盛なところでも見せつけたろか)
まなまな:「はい、かなり変わり者の彼氏がいますけど」
同僚:「やっぱ、そうだよね」
(なにが「やっぱ、そうなのか」はよくわかんないけど、ま、いっか)
2.職場の同世代の同僚1(A型女性)と別の同世代の同僚2(A型女性)についての会話
同僚1:「同僚2さんって、A型だけあって、ほんと人に気を遣える人だよね。ほかの人に合わせるのもうまいし」
まなまな:「そうなんですか?すごいですね」
(同僚2さんって、この間私に「陰で私の噂してるんですか」ってきいてきたよな。「そうですよね」なんて言ったら、いつの間にか私が同僚2さんの噂してたってことにされるから気を付けないと。それにしても、ほんとに気づかいのできる人だったら、相手にも周りにも自分が気を遣ってることを悟らせないようにもっとさりげなくやるんじゃないかなぁ)
私って、あなたの中のB型像にぴったり当てはまりましたか?