「近くに基地(ベース)があるから」
「英語力を活かせる仕事に就きたい」
ベースで働きたい理由は人それぞれでしょう。ですが、実際に働いてみると「思ってたのと違う」という人が少なくありません。
「そんなの、どんな仕事だって同じでしょ」と言われてしまえばそれまでですが、数ある選択肢の中から、より自分に合った職場を選べたらいいと思いませんか。
この記事では、横須賀海軍基地、横田空軍基地に計22年務めた経験から、募集案内ではわからない、基地従業員の実情についてご紹介します。
基地内で働くには
実は、基地従業員以外にも基地内で働く方法はあります。例えば、基地と業務契約をしている会社(建設会社、清掃会社など)に就職し、そこから基地内の仕事に派遣されるという方法です。
基地によっては、自衛隊が基地所属部隊を置いているところがありますので、その部隊に所属しても、基地内で働くことになります。
求人情報
求人情報は、エルモ(LMO)と呼ばれる「駐留軍等労働者労務管理機構」のホームページに掲載されているほか、ハローワークを始めとする求人情報サイトでも検索できます。
雇用制度と従業員のステータス
基地従業員の雇用には、基本労務契約(MLC)、諸機関労務協約(IHA)、 及び船員契約(MC)の3種類があり、契約の種類によって、従業員は「MLC(従業員)」のように呼ばれます。
また雇用形態としては常用、臨時、高齢者、PREと呼ばれる定年後の契約延長があります。
なお、この雇用は日米地位協定に基づく間接雇用なので、従業員の雇用主は日本政府(防衛省)になり、実際の使用者は米軍になります。(基地従業員の身分は国家公務員ではありません。)
そのため、米軍側の都合に合わせて、ある時は日本人従業員扱いされ、またある時は「(基地内の)所属部隊の人間だから」と体よくあしらわれたり、こき使われたりすることもしばしばです。
勤務条件
基地従業員の勤務条件は国家公務員に準ずるものとされていますが、公務員とは明らかに違うものもあります。
また、たとえ職場や職種が同じでも、アメリカ人従業員とは雇用契約が違うので、勤務条件も全く異なります。この違いについては後程説明します。
勤務時間
特殊な職務を除き、基地従業員の勤務時間は週40時間(週休2日制)で、公務員と同じですが、勤務の開始時間は公務員や一般企業の従業員より早めです。私の場合、横須賀基地では朝7時から、横田基地では7時半からの勤務でした。(両方とも職種は専門職系)
残業や休日出勤に関しては、あったとしても、あらかじめ日時を申請し、上司の承認を得たものに対してのみ、手当が支給されます。
祝日・休日・休暇
基地従業員の祝日・休日は、アメリカの祝日(11日)、海の日と山の日、夏季休暇(3日)、年末年始の冬期休暇(12月29日から1月3日の6日間)と従業員自身の誕生日の計20日間で、年によっては大統領の署名により、臨時の休日が追加されることがあります。(例:クリスマスの祝日が土曜にあたったため、振替で金曜日のクリスマスイブが休みになった。)この休日・祝日が、日数の少なさも含め、基地従業員と基地以外の職場の従業員との一番大きな違いです。
有給休暇に関しては、常勤の従業員(試用期間中を除く)の場合、年間20日(160時間)あり、1時間ずつから取ることができますし、米軍基地は、休暇が取りやすい環境にあります。ただし、ある特定の職種(例:学校関係、特に教師)では、夏休みやクリスマス休暇といった、学校がお休みの時期でないと長期休暇を取りにくいのも本当です。
その他、公務員と同様の休暇制度が利用可能ですが、病休に関しては、医者の診断書が必須(1日以上の病休を取る場合)だったり、公務員が最長3年取れる育休も、基地従業員は最長2年しか取れません。
なお、優秀な従業員は、褒章として、ほぼ毎年6日以内の休暇を通常の休暇に追加してもらえる可能性があります。
給与・昇級・褒賞・表彰
給与は国家公務員の給与体系をベースにしていて、夏と冬にボーナスが出るほか、諸手当(通勤・住居など)が支給されます。特別なものとしては地域の格差(気候や物価の違いなど)を考慮した地域手当があります。
以前あった語学手当は10年ほど前に廃止されましたし、退職手当は2020年に支給額が引き下げられました。
基本給については、職種の等級ごとに一律で、これまでの経験や資格、最終学歴は一切考慮されません。なので、どれだけ職務に関する知識や経験があろうと、ない人同様、採用初年度は給与表階段のいちばん下からのスタートになります。
昇級は1年に1度、給与表の階段を数段あがる形(例えば、昨年下から数えて11段目にいたなら、今年は15段目)でありますが、優秀な従業員に対しては、3年に1度、通常の昇級以上にステップアップ(11段目から18段目)する褒賞制度があります。
なお、報償には昇級ではなく、上述のように休暇を付与するものもあります。
表彰に関しては、10年・20年・30年・40年ごとの永年勤続表彰があり、表彰式では防衛省と米軍司令官連盟の感謝状と記念品(メダル)が授与されます。
基地内での転職・転勤を伴う別の基地への異動
同じ基地内の別の職場に転職する人はたくさんいます。
基地内の特定の部署では、すでに基地で働いている人からの応募しか受け付けないところもあるので、とりあえず基地従業員になってしばらく働いてから、本当にやりたい仕事ができる職場に移る人は珍しくありません。
注1:初めての採用からの6か月は試用期間なので、基地内での転職に応募することができません。また、試用期間中の従業員は、能力がないとみなされると、期間の終了を待たずに採用を取り消されることもあります。
ちなみにすでに1度試用期間を終えた常用の従業員は、途中で職場を代わっても、新しい職場で再度試用期間を課せられることがありません。
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注2:SOFAといって米軍基地所属のアメリカ人と結婚している人は、そもそもMLCの仕事に就くことができません。
けれど基地で働いている間にアメリカ人と結婚した人は、SOFAではありますが、そのままMLCのステータスも維持(仕事を継続)できます。
また、結婚した相手の転勤に伴い、例えば横須賀基地から佐世保基地に移動することになっても、横須賀基地での仕事を辞めない状態で佐世保基地の仕事に応募し、採用されればMLCとして働き続けることが可能です。
なお、転勤を伴う別の基地への異動は、従業者本人が希望し、求人に応募、採用されたときのみありえます。(例外はほとんどありません。)ただ、あくまでも本人の希望なので、転勤にかかわる時間もコストもすべて従業員が負担しなければなりません。
福利厚生
福利厚生は充実しています。
加えて、基地内にあるアメリカ人向けの福利厚生施設・サービスのうち、娯楽関係の施設は日本人従業員も利用が可能です。
職場環境
基地内といえども同僚のほとんどが日本人という職場もあれば、日本人は自分だけという職場もあります。
そして、日本人従業員が多ければ多いほど、「日本のアメリカ」にいながら、年功序列を重視する日本的な職場環境になりがちです。
別の言い方をすれば、残念ながら、日本人が多い職場では、勤務年数の長い人が幅を利かせていたり、いじめもあります。(女性が多い職場だけの話ではありません。)
だったらアメリカ人の多い職場のほうがいいかと言われると、一概にそうとも言えません。
中には、日本(または日本人)を見下し、日本人従業員に対してtake advantageする(つけ込む)人もいます。
ただ、日本人とアメリカ人の割合にかかわらず、職場環境に関してもっとも留意すべきなのは、上司はあくまでもアメリカ人だという点です。
ほとんどのアメリカ人上司は2-3年で交代するので、職務内容から基地内の雑事まで、実は上司より部下である日本人従業員のほうがよく知っているという状況が往々にして生まれます。
そのため、従業員の中には、あたかも自分のほうがボスであるかのように振舞い、上司との間にトラブルを引き起こす人がいます。
そういった振舞いは、最悪の場合、上司への不服従と見なされて懲罰の対象になるので要注意です。
問題処理
上述のケースとは逆で、上司の言動が原因で問題が起こった場合は、基地内にある日本人従業員用の人事課で苦情処理の申し立てができます。
ただし、事実関係の調査後、たとえ日本人側の訴えが認められたとしても、申し立てを行ったことで上司との関係が悪化し、結局、いたたまれなくなって職場を変わったり、仕事を辞めていく従業員がいるのは悲しい事実です。
アメリカ人従業員の雇用条件
雇用条件に納得した上で始めた仕事のはずが、自分と全く同じ仕事をしているアメリカ人従業員の雇用条件について耳にし、自分の待遇に不満を感じる従業員は少なくありません。
例として、横田基地でのアメリカ人の同僚の雇用条件を私の条件と比較すると、アメリカ人は、
- 勤務時間が1時間短い
- 1か月分に相当する給料は約2.5-3倍(ただしアメリカ人には年2回のボーナスはなし)
- 祝日の数は同じでも、休日の数が多い(勤務日が少ない)
- 家賃や光熱費は全額支給される
- アメリカ政府の支払いで、2-3年に1度、アメリカと日本を往復できる
と、「やってられないよ」と思わずにいられないような格差があります。
しかし、アメリカ人従業員は「海外勤務」をしているのであり、本国で同様の職務についている人と比べても、これは破格の扱いです。だとすれば、「国内勤務」の日本人従業員と単純に条件を比べても意味がないことでしょう。
その他
- 定年後の契約延長は、現在70歳まで可能になっています。
- これまでは60歳以降、1年ごとに契約を更新する必要がありましたが、2024年の時点では、1度の契約延長で65歳まで働けるように変わっています。
- 定年後の契約延長は、従業員本人の希望があれば、承認されるのが基本です。ただし、上司から「雇用の継続には不適格」と見なされ、それを証明するに足る書類等の提出があった場合、承認されないこともあります。
- 外国籍の従業員もいます。
FQA
Q:基地従業員は基地内のお店で買い物ができますか?
A:レストラン等で食事をしたり、ベーカリーやコンビニのようなお店で軽食を買うことはできますが、日用品や食料品は買えませんし、ガソリンスタンドも利用できません。
なお、支払いにはクレジットカード、円、ドルが使用できます。また、例えばレストランで食事をしたとき、出張でホテルに宿泊したときなど、アメリカ国内と同様にチップを払う必要があります。
Q:基地従業員は、自分の子供を基地内の学校に入れることができますか?
A:従業員であるかないかにかかわらず、子供を基地内の幼稚園から高校に通わせるには、アメリカ人の保証人(身元引受人)が必要です。
ただし、大学・大学院に関しては、日本人学生も通うことができます。詳細については、基地周辺に事務局がある(例:三沢基地の場合、青森県国際交流協会)ので、そちらに問い合わせてください。
Q:基地で働くにはやっぱり英語ができないとだめですよね?
A:職種によって求められる英語力が違います。募集案内にどの程度の英語力が必要か(TOEICの点数など)記載してあるので、確認してみてください。
とりあえずリスニング力をつけたいという人には、
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余談になりますが、私はアメリカに住み始めたばかりのころ(米軍基地で働く前の話です)、暇さえあればテレビで通販番組を見ていました。同じフレーズが何度も繰り返されるので、英語耳を作るのに最適だったからです。(おかげで、いらないものを買ってしまいましたが…。)
まとめ
国内の米軍基地に勤務することのメリット・デメリットについて、できる限り客観的にご紹介したつもりですが、みなさんが基地内で働く、あるいは働かない決断するお手伝いができたでしょうか。
日本人の基地従業員は、在日米軍が安定的に任務を遂行する上で必要不可欠な存在です。
「安定した収入が得られて国際貢献もできる」職場をお探しの人にとって、米軍基地はピッタリの職場となるでしょう。
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