あなたは今日、誰かにお礼やお詫びをしましたか?
こっちがお詫びしてもらいたいことならあったけど、お礼やお詫びをするようなことは特に何もなかったわね。
お詫びしてもらいたいことって、何があったんですか?
お詫びしてもらいたいというか、腹が立ったというか。
サークルで一緒の人たちのことなんだけどね、最近妙にA子さんとK子さんがくっついてるから、仲のいいU子ちゃんに「あのふたり、どうかしたの?」ってきいてみたのよ。そうしたら『「私(I子)がK子さんのことで文句言ってる」みたいなうわさを、A子さんがサークルのみんなにしたって。で、それ以来ふたりは仲良くしてる』って言うじゃない。もう頭に来て。だって文句言ってたのはA子さんで、私はそれを聞かされてただけなのに。
だいたいK子さんも、A子さんがどういう人かわかってるだろうに…。(グチはまだまだ続く)
「って、あんたたちは女子中学生か!」というツッコミはさておき、「似たような経験をした」という方は意外と多いのではないでしょうか。もしみなさんがI子さんの立場だったら、この問題にどう対処しますか。
私なら、A子さんやK子さんに対して、特別なことは何もしません。二人が何を言おうと、何をしようと、できるだけ関わり合いを避け、我関せずで放っておきます。
おそらくA子さんはみんなの注目を浴びたい「かまってちゃん」なのでしょう。それともI子さんに対して劣等感を抱いていて、K子さんを味方につけることで、自分が上になった気でいるのでしょうか。いずれにせよ、そんな人はこちらが反応することで、ますます図に乗る可能性が高いです。
それよりも、まず自分自身が他人の目を気にして悩んだりグチを言ったりするのをやめます。U子さんのように、悪いうわさを聞いても態度を変えない人もいるのですから、もっと自分に自信を持てばいいだけのことです。(詳しくは「対人関係の改善に役立つのはどっちのタイプ?『 愚っ痴ぃ』それとも『自慢しぃ』?」で説明していますので、そちらをご覧ください。)
ただ、スーパードライの私と違って、「しょっちゅう顔も合わせるし、やっぱりどうにかしてうまくやっていきたい」という方も多いと思います。そこで、今回の記事では対人関係の悩みを解決するもう1つ別の対処法をご紹介します。
お礼とお詫びの言葉「すみません」
「お礼」とは「感謝の気持ちを、言葉や物に託して(相手に)贈ること」です。
一方「お詫び」とは「謝罪の気持ちを、言葉や物に託して(相手に)贈ること」です。
みなさんはお礼を言うとき、どんな言葉を使いますか。お詫びの時はどうでしょう。
日本語にはこの両方の場面で使える「すみません」という便利な言葉があります。
「すみません」は「済む」の否定形「済まない」を丁寧な言い方にしたもので、漢字だと「済みません」と書きます。基本の意味は「済む=(物事が)終わる」→「済まない=終わらない」ですが、挨拶の言葉として使う場合には、同音の「澄む=不純物がなくなる」→「澄まない=すっきりしない」の意味を含み、「すみません=気が済まない・すっきりしない」となります。
歴史的にみると、もともと謝罪の場面で「(相手に)失礼なことをして、こちらの気が済まない」という心情を表すために使われていた「すみません」が、時代を経て感謝の場面でも「(相手のしてくれた厚意に対して)煩わせて申し訳ない」という気持ちで使われるようになったようです。
要するに、一見正反対のように思える「お礼」と「お詫び」ですが、実は基本的に同じ「(このままでは自分の気持ちがおさまらないので)言葉や物を通じて、気持ちを贈る」行為を表していると言えるでしょう。
お礼とお詫びの有効利用
お礼とお詫びが、本来自分の気持ちをおさめるための行為だとわかったところで、次は対人関係の改善にどう有効利用するか、I子さんのケースを例にとって説明します。
まずアプローチするのは諸悪の根源A子さんです。A子さんに「サークルがうまくいくよう、いろんな人に声をかけてくれてるんですって?気を遣って大変でしょう」と感謝の気持ちが伝わるよう、ねぎらいの言葉をかけます。その後K子さんに対しては「なんか私のせいで気を悪くさせてしまったって聞いたんだけど…」とお詫びします。
「何で!?」と思われるかもしれませんが、自尊心をくすぐられたA子さんは、これでI子さんも自分の保護下にいるとみなし、冷たい態度を改めます。一方、K子さんのほうは、もしかすると噂の真相に気づいたものの、I子さんと仲直りするきっかけが見つからないまま、A子さんにくっついていたのかもしれません。もしそうなら、I子さんのほうから近づいてくれたことをありがたく思ってくれるでしょう。逆に、A子さんの言葉をうのみにして、I子さんのことを悪く思っていたとしても、I子さんに謝ってもらえたことで、腹の虫がおさまるはずです。
どんな対人関係もこれで100%確実に改善されるという保証はできませんが、過去の経験からすると、一時的にせよ、ゴタゴタの解消率はかなり高いです。
それでもなんだかモヤモヤが残るという方に朗報です。
この「お礼」と「お詫び」はあくまでも口先だけ、うわべだけのもので、心からの気持ちである必要はありません。少なくとも聖人じゃない私には、心の底からA子さんにお礼を言ったり、K子さんにお詫びをしたりすることはできません。むしろ、心の中で二人のことを愚かだと思ったり憐れんでいます。了見の狭い人間だと言われるかもしれませんが、私がそう考えていることを誰かに話すわけでもありませんし、そう考えることでモヤモヤがなくなれば、私の心の健康には何よりです。
まとめ
グループ内であれ、職場であれ、家庭内であれ、誰かに嫌われたり仲間外れにされたいと願う人はほとんどいないでしょう。ましてそのせいで傷ついたり腹を立てたりしたい人もいないはずです。
最初にお話したように、対人関係の改善策として私が一番にお勧めするのは、問題から遠ざかることです。けれどそれができないのであれば、口先だけ、うわべだけでいいので、「お礼」と「お詫び」を有効利用してみてください。例えば「1日1回必ず誰かにお礼を言うこと」のように、常日頃から他者に感謝することを習慣づけておくと、問題が起こった時にお礼やお詫びもしやすくなりますし、そもそも問題自体起こりにくくなります。
それでもいい結果が得られない時は、最後の手段で周りを固めていきましょう。I子さんの場合なら、U子さんを始めとする当事者ではないけれど、関係者である人たちに、あなたのサポートをお願いしましょう。