長い間、遅寝・遅起きの夜型人間には、怠け者とか不健康といったレッテルが貼られていました。
けれど、早寝・早起きが信条の朝型人間のほうが、本当に夜型より勤勉で、健康なのでしょうか。
この記事を読むと、
・早寝・早起きが必ずしも万人にとって三文の得とは言えないこと
・夜型の人向きの働き方
がわかります。
クロノタイプ
クロノタイプ(chronotype)とは、体内時計によって1日24時間のうち、どの時間帯に活動が一番活発になるかを表した時間(chron-)特性の分類(type)です。
クロノタイプは睡眠・覚醒リズムによって、大まかに次の3つのタイプに分けられます。
- 朝型:午前中に活動のピークを迎え、夜になると自然に眠くなる
- 夜型:午後から夕方に活動のピークが訪れ、夜になっても眠くならない
- 中間型:朝型と夜型の中間的特徴を持つタイプ
クロノタイプの割合
クロノタイプを調べるサイトはいくつかありますが、その1つに国立精神・神経医療研究センターの「睡眠医療プラットフォーム」があります。
睡眠に関するセルフチェック(「朝型夜型傾向」)の質問(選択式で19問)に答えると、「超朝型」「朝型」「中間型」「夜型」「超夜型」の5つのタイプのうち、自分がどのタイプに当てはまるか確認できます。
また、回答ページには、自分の判定結果(私は「超夜型」でした)だけでなく、日本人の一般成人4,000人のタイプ別割合も棒グラフで表示されます。
超朝型 | 3% |
朝型 | 21% |
中間型 | 67% |
夜型 | 8% |
超夜型 | 1% |
*グラフには詳細な数値が記載されていなかったため、タイプ別のパーセンテージは著者が目測で出した値をもとに計算しました。
*著作権の侵害に当たる可能性があるため、実際のグラフはお見せすることができません。興味がある人はご自身でセルフチェックをして、ご確認ください。
超朝型 | 5.9% |
朝型 | 22% |
中間型 | 41% |
夜型 | 22.7% |
超夜型 | 8.4% |
なお、同じ国立精神・神経医療研究センターのセルフチェックを使った別の判定(回答者1,170名)では、左図のような結果が得られていました。
参考資料:北村真吾、肥田昌子、三島和夫『クロノタイプによる睡眠覚醒パターン、気分調節の特徴』
一般的には、こちらの数値のほうがクロノタイプの割合として認知されていると思います。
体内時計:メラトニン vs 時計遺伝子
体内時計に作用するものとしては、これまでメラトニンが有名でした。
身体に「朝だよ」「夜だよ」と信号を送ってくれるホルモンで、睡眠ホルモンとも呼ばれています。
メラトニンの主な働きは3つ。
- 朝、光を感知すると分泌され、体内時計をリセットする
- 身体活動を促したのち、分泌を中断
- リセットから約15時間後に、再び分泌を高めて眠気を感じさせる
このことから、これまでは
- 朝日を浴びれば目が覚めるし、自然に夜眠くなるはず → 遅寝・遅起きになるのは本人が早寝・早起きの努力しないから
- 朝日を浴びないと体内時計が狂い、その結果、睡眠の質が低下し、ホルモンや自律神経のバランスが乱れて、精神面や体力面、健康面に悪影響を及ぼす → 夜型の人は不健康であり、怠慢である
という論理がまかり通っていました。
けれど、2017年に体内時計をコントロールする時計遺伝子とそのメカニズムが発見されると、睡眠・覚醒リズムに関する研究がさらに進んで、クロノタイプは意志の力でどうこうできるものではなく、遺伝子レベルで生得的に決定されていることが判明しました。
より正確に言うと、朝型の人は夜型の人に比べて、時計遺伝子を多く持ち、さらにその時計遺伝子が網膜に集中しているのだそうです。
要するに今では、
- 自分の体内時計(時計遺伝子)に合っていない睡眠・覚醒リズムで生活を続けると、誰であれ(クロノタイプが何であれ)、心身体に悪影響を及ぼす可能性が高い
が共通理解になったわけです。
社会のクロノタイプ
人間のクロノタイプについて要点をまとめると、以下のようになります。
- クロノタイプには大きく分けて「朝型」「中間型」「夜型」の3タイプがある
- 研究によって数値に差はあるが、人口のおよそ3割強が朝型、5割前後が中間型、3割弱が夜型だと推測できる
- クロノタイプは遺伝子により決まっている
- 自分のクロノタイプに合わない生活は心身体によくない
にもかかわらず、世界中ほぼどの国においても、社会のクロノタイプは「朝型」です。
会社も学校も公共施設も、開始は8-9時、終了は5-6時がほとんどです。スポーツの試合や試験も基本的には日中に行われます。
中間型の人ならまだしも、夜型の人にとっては真価が発揮できない時間設定ではないでしょうか。
朝型社会の問題点:パフォーマンス実験・研究結果
コロナ禍の間、世間ではテレワークの普及等によって浮いた通勤時間を有効利用できる「朝活」なるものが推奨されてきました。ことわざにもある「早起きは三文の得」を、地で行こうというわけです。
けれど、海外の研究結果は、夜型の人にとって早起きは有益とは言えないことを示しています。
高校生の睡眠時間・パフォーマンスと始業時間の関係
2016-2017学年度に、ワシントン大学のダンスター他が、シアトル学区にある2つの公立高校で始業時間を約1時間遅らせた際、睡眠覚醒サイクルがどう変化するか調べたところ、
- 出席率が向上し、遅刻が減少した
- 毎日の睡眠時間が30分以上延長された
- 4.5%の成績向上につながった
という有意ある結果が得られました。
クロノタイプと活動時間の不一致による成績への影響
オランダの高校生を対象にした研究では、
- 夜型のほうが朝型より睡眠時間が短い
- 1日の早い時間に試験があった場合、夜型のほうが理系科目において成績が低い
ことがわかりました。
認知能力と身体能力に対するクロノタイプの影響
クロノタイプが明確な56人を対象に、さまざまな時間帯におけるパフォーマンス指数を測定したフェイサー=チャイルズの研究によると、
- クロノタイプと一致する時間帯よりクロノタイプと一致しない時間帯において、認知能力および身体能力が低下した
- 朝型は1日のうちの遅い時間帯で、夜型は早い時間帯で、より強く眠気を感じ、両方の能力とも劣っていた
ことが明らかになっています。
参考資料:
Zerbini, Giulia, Vincent van der Vinne, Lana K. M. Otto, Thomas Kantermann, Wim P. Krijnen, Till Roenneberg and Martha Merrow (2017) Lower School Performance in Late Chronotypes: Underlying Factors and Mechanisms, Scientific Reports, Vol.7.
Facer-Childs, Elise R., Sophie Boiling and George M. Balanos (2018) The Effects of Time of Day and Chronotype on Cognitive and Physical Performance in Healthy Volunteers, Sports Medicine, Vol.4, pp.47-58.
Dunster GP, de la Iglesia L, Ben-Hamo M, Nave C, Fleischer JG, Panda S, de la Iglesia HO (2018) Sleepmore in Seattle: later school start times are associated with more sleep and better performance in high school students. Sci Adv 4:eaau6200.
夜型に向いた働き方
理想を言えば、社会全体でフレックスタイム制、または2部制・3部制を導入して、誰でも自分のクロノタイプにあった時間帯に、仕事ができるようになってほしいです。
そうなれば雇用が増え、それに伴って当然稼働時間も増えますし、生産性も上がるはずです。
「通勤ラッシュもストレスが原因の健康被害も、事故や犯罪も減り、ありとあらゆる人にとってWin-Winの状況では」と思えるのですが、そう思う私は短絡的なのかもしれません。
残念ながらおそらく天変地異でも起こらない限り、勤務体制が大幅に、それも数年以内に変わることはないでしょう。
ならば、特に夜型の人は、健康を維持するためにも、真価を認めてもらうためにも、1日の中でも遅い時間帯に働ける仕事を選ぶしかないように思います。
(例)
- 24時間救急対応が求められている仕事:病院・警察・消防関係など
- 夜勤の仕事:ドライバー、警備員、ビルの清掃員、コンビニ店員、ホテルスタッフなど
- 自分で勤務時間が決められる仕事:アーティスト、フリーランスなど
- フレックスタイム制を導入している職場の仕事
最後に
個人的な話になりますが、私は約1年半前まで米軍基地内にある教育事務所に勤務していました。
基地内の職場では、たいていどこも基地外の職場よりも就業開始時間が早めに設定されていて、私の勤務時間は7:30-4:30でした。
けれど「超夜型」の私は、ほぼ毎日夜の7:00過ぎまで仕事をしていました。夕方以降のほうが集中力も創造力も高まって、より効率的に仕事ができたからです。
そして寝るのはたいてい夜中の1時過ぎ。
すぐに寝つけるわけもなく、平日は毎日6時間に満たない睡眠しかとれていなかったので、土日は完全に寝だめに使っていました。
それが仕事を辞めてからのこの1年半、ほとんど目覚ましをかけることもなく、起きたくなったら起きて、眠くなったら寝るという遅寝・遅起きの生活に変わりました。
はたから見れば、超怠け者に見えるでしょうが、自分のクロノタイプにあった時間帯に社会活動をするようになったおかげで、大きな利点がありました。
肝機能の数値が改善されたことです。
前職に在籍中、私は常に健康診断でCまたはD判定を出されていました。お酒はほぼ飲まないので、自分が感じていた以上にストレスがたまっていたのでしょう。
そんな私みたいな人が世の中にはたくさんいるのではないでしょうか。
もしもあなたが「(超)夜型」なのにもかかわらず、「朝型」の社会生活を送っているのであれば、おそらく心身体のどこかに不調の兆しが見えているはずです。
余計なお世話かもしれませんが、ストレスフリーの暮らしを望むのであれば、今の働き方を見直してみることも大切だと思いますよ。
参考文献:
ADOLESCENT SLEEP WORKING GROUP; COMMITTEE ON ADOLESCENCE; COUNCIL ON SCHOOL HEALTH; School Start Times for Adolescents, Pediatrics (2014) 134 (3): 642–649.
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