みなさんは友だちや同僚に「協調性がない」と言ったこと、または言われたことがありますか。
日本人しかいない学校や職場だとあまりないかもしれませんが、米軍基地の中ではそう珍しい話でもなく、これが原因で対人関係にヒビが入ることも少なくありません。
今回の記事では、
①協調性とはどんな性格的特性なのか
②協調性のある(高い)人とない(低い)人にはどんな特徴があるのか
③「協調性がある」と他人に言う人と言われる人ではどう違うのか
④協調性の有無が絡んだ対人関係のもめ事にはどう対処すべきか
についてお話します。
基地内の実例を見る限り、他人に「協調性がない」と言う人に限って、自分には協調性がないか低いにもかかわらず、自分のことを協調性があると考えている人が多いように思えます。
そして、そういう自分に協調性があると思い込んでいる自己肯定感の低い人たちこそ、本当に付き合うのが厄介な人たちです。
協調性とは
そもそも協調性とはどういった性質を表しているのでしょうか。
現在、心理学の分野では、性格を5つの特性で分類するビッグファイブ(理論)が主流となっています。
協調性はその5つの特性のうちの1つで、「NEO-PI-R」と呼ばれるビッグファイブ性格診断では、以下の6つの性質が協調性を測る要素として挙げられています。
- 信頼性
- 実直さ
- 利他性
- 応諾
- 謙虚さ
- 優しさ
つまり、「協調性がある人」というのは、「これら6つの性質が高めで、他者を尊重し、寄り添い、思いやることができる人」だと言えます。
「協調性がある・高い人」と「ない・低い人」の特徴
協調性がある・高い人と、ない・低い人には次のような特徴があります。
協調性がある・高い人 | 共感力が高い 空気が読める・妥協できる 情緒的・一般的 集団行動やチームワークを好む 追従タイプ |
協調性がない・低い人 | 判断力・決断力が高い 個人主義 論理的・専門的 単独行動を好む リーダーになれる素養がある |
集団主義の日本では協調性がある・高い人のほうが好まれがちですが、個人主義のアメリカでは協調性のない・低い人のほうが社会的に成功していたりします。
これは、環境が違えば、見方を変えれば、どちらのタイプの特徴も、長所にも短所にもなりうることを意味します。
他人に「協調性がない」と言う人と言われる人の特徴
日本人は、礼儀正しく、親切で、出しゃばらず、勤勉な国民だと言われています。また、波風を立てず、「和を以て貴しとなす」ことをよしとみなす人が多いように思われます。
そんな国民性なので、日本の社会ではたとえ誰かのことを「協調性がない・低い」と思ったとしても、とりわけ協調性のなさを短所だと思っているなら、面と向かって相手にそうは言わないでしょう。
けれど「日本のアメリカ」と呼ばれる米軍基地内では、少々事情が異なります。
私の知り合いに、同僚の日本人から「協調性がない」と責められ、上司のアメリカ人に告げ口までされた人がいました。
事例紹介
A子さんとB子さんは同じオフィスで、同じ職種の仕事をしていました。
二人とも小中学生のお子さんがいる40代のお母さんワーカーというところは同じですが、基地内で働き始めたのも、同系列のそれぞれ別のオフィスから今のオフィスに移ったのも、A子さんのほうが先でした。
あとから入ったとはいえ、B子さんもその分野での職歴は十分に長かったので、二人の立場は、A子さんが先輩風を吹かすこともなく、対等なものでした。
さて、そんな二人が同じオフィスで働くようになって半年が過ぎたころのことです。帰り支度を始めたA子さんのもとに、B子さんがやってきました。
もう帰るんですか?
はい、就業時間も終わったし…。
上司から協働で仕事をするように言われてますよね?
気づいてないかもしれませんが、こっちは毎日1時間以上残業してるんですよ。
協働といっても、二人一緒に同じ複数の案件にかかわるんじゃなくて、案件を分担して、それぞれに作業したほうが効率がいいって話になったとばかり思ってたんですけど…。
じゃあ、協力する気はないってことですか?
ホント、A子さんって協調性がないんですね。
B子さんはそう言うと、不機嫌な顔で自分のデスクに戻ってしまいました。
取り残されたA子さんは、途方に暮れ、結局はそのまま帰宅しました。けれどすっかり落ち込んでしまい、就寝時間が過ぎても、自分の何がいけなかったのか、今後どうすればいいのかと考え、なかなか寝付けません。
いろいろ悩んだ末、次の日の朝、A子さんは自分からB子さんに手伝いを申し出ることにしました。けれどB子さんの不機嫌は直らず、二人の間の重苦しい空気は同じオフィスのアメリカ人の同僚たちにも伝わります。
日がたつにつれ、A子さんは職場に行くのがだんだんと苦痛になってきました。そして毎日、誰にも何も言わないまま、針の筵に座っているような思いで仕事をしていましたが、ある日突然、アメリカ人の上司から、B子さんが長期療養休暇を取ったと聞かされます。職場の人間関係からくるストレスで、精神的に追い詰められたせいだと…。
A子さんはもう何が何だか分からなくなってしまいました。
まず最初に言っておくと、基地では従業員が簡単に長期療養休暇を取ることができます。
手順は①病院の心療内科等でストレステスト(ストレスレベルを自分で判定)を受け、②診断書を出してもらい、③その診断書を提出するだけ。
B子さんもまさにそうやって短期間で休暇を申請し、即座に休暇に入りました。
それにしても、どうしてA子さんではなく、B子さんがストレス休暇を取ることになったのでしょうか。
実はアメリカ人の同僚Cさんが、B子さんのA子さんに対する態度を目にし、上司にA子さんのことを悪くいったという話も聞いて、B子さんに一言物申したことが原因でした。
B子さんは、自分がA子さんにしたようなことを、今度は自分がされて傷ついたというわけです。
これも米軍基地あるあるですが、基地内では「やられる(先を越される)前にやる」「何事も(先に)言った・やった者勝ち」のようなところがあります。
B子さんは長期療養休暇を取ることで、少なくとも事情を知らないひとたちに、自分が弱者だとアピールした形になります。
言動の比較
「協調性がない」と言ったB子さんと、言われたA子さんの言動をリストアップしてみると、二人の性格の違い・特徴がよくわかります。
言動 | |
「協調性がない」 と言われた人 A子さん | ・定時に帰宅 ・自分の言動を振り返り、原因と解決策を模索 ・歩み寄りの姿勢 ・悩みを内に秘める ・我慢する |
「協調性がない」 と言った人 B子さん | ・毎日1時間以上の残業 ・相手を非難する ・聞く耳を持たない ・自分の悩み(不満)を上司に訴える ・対人関係からくるストレスで長期休暇を取る |
こうして比べてみると、明らかに協調性がある・高いのはA子さんで、協調性がない・低いのはB子さんです。
もめ事への対処法
ところで、二人のうち、どちらのほうが対人関係でもめやすいタイプだと思いますか。
おそらくほとんどの人が、友だちや同僚として付き合うなら、A子さんがいいと思うのではないでしょうか。
協調性のある・高いA子さんは、他人に合わせるのがうまいため、自分からもめ事を引き起こすことはないかもしれません。けれど他人に合わせてばかりいると、その人に振り回されたり、いいように扱われがちです。
それで構わないと言うのであれば、A子さんは自分自身も他人との付き合い方も一切変える必要はありません。
けれど実際には落ち込んだり、悩んだり、仕事に行くのが苦痛になったりしているわけですから、できればもっとストレスの少ない生活を望んでいるのではないでしょうか。
そんなA子さんには自主性を高め、自分に自信を持つことをお勧めします。
いつもいつも他人の言いなりになるのではなく、時々でも自分の意見を言うようにすれば、周囲の人も好き勝手なことを言ったり、相手を見下すような態度は改めるはずです。また、たとえ周囲が変わらなくても、自分に自信があれば、そう簡単に傷ついたりしなくなるでしょう。
一方、B子さんには①勘違いのアメリカナイズを辞め、②自己肯定感を高めることをお勧めします。
これまた米軍基地あるあるですが、所かまわず、相手かまわず、自分の意見を主張するのがアメリカ的だと勘違いしている日本人従業員(特に女性)にたくさん出くわします。それもたいていの場合、言い方が高飛車です。
どんな時に、どんな相手に、どんな意見を言うのが本当にアメリカ的で、良好な対人関係を築く役に立つのか、1度じっくりと考え直したほうがいいでしょう。
なお、自己肯定感を高めるための具体策については「不平不満でいっぱいの人は今すぐ試して!人生を好転させるための具体策と実践ツール」で紹介していますので、そちらをご参照ください。
もう1つ、余計なお世話ですが、B子さんが毎日1時間以上も残業しなければならないのは、仕事が大変というよりも要領が悪いからのような気がします。
同じ仕事をしているA子さんは定時に帰宅できるのですから、どういうやり方をすればいいのか素直に聞いてみるのはどうでしょう。
上司の対処法
B子さんの長期休暇が終わっても、おそらく問題は残ったままだろうと推測した2人のアメリカ人上司は、人事課と相談し、同系列のさらに別のオフィスにいるC子さんとB子さんを入れ替えることにしました。
もちろん、B子さんだけでなく、C子さんも同意しないことにはありえない対処法ですが、幸いなことに2人とも異動を了承し、かなりスムーズに入れ替えが完了しました。
「問題は他所に回す」というのも米軍基地のあるあるです。
少なくともA子さんは新たにやってきたC子さんと楽しく仕事ができているようですが、B子さんはどうでしょう。
B子さんの移った先にはD子さんという日本人従業員がいます。D子さんの性格にもよりますが、B子さんが変わらない限り、また同じようなことが繰り返される気がします。
まとめ
協調性に関しては、以下のようなことが言えると思います。
- 協調性があることは必ずしも長所とは言えず、協調性がないことも必ずしも短所とは言えない
- 誰かに「協調性がない」と言われたからといって、傷つく必要はない
- 他人に「協調性がない」と言う人たちは、自己肯定感が低いことが多い
- 協調性がない・低いタイプの人でも、コミュニケーションがうまければ、円滑な対人関係が築ける
同じような問題に直面している、特に米軍基地従業員のみなさんのお悩み解決に役立てば幸いです。
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