山菜の王様と呼ばれるタラの芽、女王と呼ばれるコシアブラ。
春になると、天然物を求めて山に分け入る人も少なくないでしょう。
けれど、見渡す限り、似たような木の芽だらけ。
採ってはみたものの、100%本物とは言い切れないし、食べても大丈夫なのかしら?
今回は、春に人気のタラの芽とコシアブラの見つけ方から、よく似た他の木の芽との見分け方、採るとき・食べるときの注意点もご紹介します。
タラの芽
基本情報
タラの芽は、北海道から九州に分布するウコギ科の落葉低木タラノキの新芽です。
タラノキは成長すると、2~6メートルほどの高さになります。
外見的特徴:
幹 | 灰褐色 まっすぐであまり分岐しない |
トゲ | 灰褐色 細長く鋭い 幹や葉の間にびっしり生える |
芽 | 黄緑色に褐色が混じった袴に包まれている 幹や枝の先端から出る(幹の途中から出ることもあり) |
幼葉 | 縁:鋸歯型 色:表が緑色、裏は白っぽい 全体的に産毛あり 幹や枝の先端だけに集まってつく |
夏には白い小さな花が咲き、秋になると紅葉し、黒紫色の実がなります。
タラの芽にはカリウムが多く含まれ、体外に塩分(ナトリウム)を排出する働きがあるので、高血圧やむくみの解消に効果があるとされています。
また、整腸効果が期待できる食物繊維に、貧血予防にもなる葉酸、他にもビタミン類、たんぱく質、カルシウムと、栄養満点です。
タラの芽の見つけ方
タラノキは日当たりのいい場所を好むため、農道や林道脇の法面、伐採の跡地など、山の中でも人の手が入ったところでよく見かけます。
高速道路脇の斜面沿いにもいっぱいあるけど、採りに行けないからなぁ。
タラの芽が出る時期は桜の咲く時期とほぼ同じで、中国・四国・九州地方なら3月末から4月の上旬、関東だとそれより少し後の時期、中部・東北・北海道地方になると、ゴールデンウィークあたりになります。
採り方
タラノキは弱い木です。
枝ごと切ると簡単に枯れてしまうので、タラの芽を採るときは袴(付け根の茶色い部分)のところだけをはさみで切るか、指で折ります。
それも、1年目の若木は避け、基本的に枝の一番てっぺんの芽1つだけを採ります。
これは、
- 十分に成長していない木の芽を採ると、気が枯れてしまう可能性が高い
- 下の芽を残して枝を伸ばさせ、翌年以降の収穫量を増やす
ためです。
持ち物・服装
手の届かない高さの枝の先端にあるタラの芽を採ろうと思ったら、トゲ対策が必須です。
まず、先端が曲がった棒(引っかけ棒・フック棒)で枝や幹を引っかけて手の届く位置まで下ろし、作業用手袋(できれば革製)を嵌めた手で袴のところをつかんで採るのがベストです。
また、タラの芽の採れる時期はスズメバチや蛇が活動を始める時期とも重なります。
服装は、トゲが引っ掛かりにくい素材でできた明るい色の長袖・長ズボンと長靴の着用がおすすめです。
*スズメバチは黒い色に寄ってきます。
*足首の隠れないスニーカー等では、うっかりマムシやヤマカガシを踏んだ際、危険です。
コシアブラ
基本情報
コシアブラは、沖縄を除く全国に自生する、タラの芽と同じウコギ科の落葉高木です。
その名は昔、樹脂をこして錆止め油をとったことに由来します。
外見的特徴:
幹 | 灰褐色 |
トゲ | なし |
芽 | 油っこく光沢あり 黄緑色の袴に包まれている |
幼葉 | 細い柄の先で5枚の葉が均等に広がる 色:黄緑 縁:トゲ状の小さな鋸歯型で先端は細く鋭くとがっている 葉柄:成長すると緑から赤紫色に 産毛あり |
夏は淡い黄緑色の小花が球状に集まって放射状に付き、秋になると透き通ったような淡い黄色に紅葉し、黒色の実がなります。
コシアブラには抗腫瘍作用、抗酸化作用があり、ポリフェノールを含んでいるので、アンチエイジング効果や血液をさらさらにする効果があると言われています。
また、幼葉には血圧降下作用のある成分も含まれており、薬用植物としても知られています。
コシアブラの見つけ方
コシアブラも、タラの芽同様、比較的明るく開けた場所で見つかります。
特に、痩せた尾根や開削・伐採された日当たりのよい斜面に多く生えています。
採集に適した時期は、タラの芽より少し遅いくらいです。
九州から中部地方あたりの平地では4月上旬、東北地方では5月初旬から下旬、標高の高い場所では6月頃まで新芽が楽しめます。
コシアブラの採り方
コシアブラは小さな葉を付けた柄がまっすぐ揃って上に伸びている状態の物を採ります。
その際、袴ごと若芽の柄の付け根からもぎ取るように採取しないと、葉がばらばらになってしまいます。
1本の木から全部の芽を採ってしまうと、木が枯れてしまうので、採りすぎに注意します。
タラの芽(タラノキ)・コシアブラに似た樹木
ヤマウルシ(ウルシ)
タラの芽(タラノキ)と間違えやすい樹木の1つにウルシ科の落葉低木のヤマウルシがあります。
タラの芽と生育環境が似ているので、混在していたり、すぐ近くに生えています。
ヤマウルシにはウルシオールという成分が含まれるため、葉っぱや樹液にさわると、肌がかぶれることがあります。
外見的特徴:
幹 | 灰緑色 |
トゲ | 赤褐色・赤紫色 バラのトゲに似ている |
芽 | 赤褐色・赤紫色の袴に包まれている |
幼葉 | 色:赤褐色・赤紫色 形:卵型・楕円形で端が尖っている 軸:赤褐色・赤紫色 全体に軟毛あり |
ヤマハゼ
ヤマハゼは、関東地方以西の各地に分布するウルシ科の落葉小高木です。
ヤマウルシ同様、ウルシオールを含んでいるため、肌に触れると激しい痛みを伴う炎症や水泡性の皮膚炎を生じることがあります。
1年目の若木は、灰白色のまっすぐな幹のてっぺんに幼芽が出てくるため、コシアブラと間違われやすいかもしれません。
外見的特徴:
幹 | 成長するにつれ、灰白色から暗褐色に |
トゲ | なし |
芽 | 細長い赤褐色の柄のついた小さな葉の集まり |
幼葉 | 色:赤褐色 形:長楕円形で両端が尖っている 褐色の毛あり |
ハリギリ
ハリギリは日本全土に分布するウコギ科の落葉高木です。
程よい日差しを好む植物なので、タラの芽が育つような開けた場所よりは、雑木林の中のほうに生えています。
材質や葉が桐に似ているのと、トゲ(針)が生えていることから、「針のある桐」という意味の「ハリギリ」と名付けられたと言われています。
外見的特徴:
幹 | まっすぐ 灰褐色 |
トゲ | 大型で鋭い 幹にまばらに生え、老木になるとなくなる |
芽 | 細長い柄のついた小さな葉の束の集まり 薄緑色でふわふわな感じ 若緑色の袴に包まれている 幹や枝の先端から出る(幹の途中から出ることもあり) タラの芽とコシアブラを足したような感じ |
幼葉 | 楓やもみじのような形状 色:緑色 縁:鋸歯型 枝先に集まってつく |
タカノツメ
北海道の北部と沖縄を除いた日本全国に見られるウコギ科の落葉高木です。
冬芽の見た目がタカの爪に似ていることから、その名が付いたそうです。
新芽はコシアブラに非常によく似ており、産毛のあるなしでしか見分けがつかないかもしれません。
外見的特徴:
幹 | 灰白色 |
トゲ | なし |
芽 | つやのある黄緑色 黄緑色の袴に包まれている |
幼葉 | 扇形に広がる3枚の小さな葉に柄が付いている 色:黄緑色 縁:毛状の微細な鋸歯型で、先端がとがっている 無毛 幹や短い枝の先端に束になってつく |
本物とニセモノの見分け方
幹 | トゲ | 新芽 | 幼葉 | |
タラノキ | 灰褐色 まっすぐであまり分岐しない | 灰褐色 細長く鋭い 幹や葉の間にびっしり生える | 黄緑色に褐色が混じった袴に包まれている 幹や枝の先端から出る(幹の途中から出ることもあり) | 縁:鋸歯型 色:表が緑色、裏は白っぽい 全体的に産毛あり 幹や枝の先端だけに集まってつく |
コシアブラ | 灰褐色 | なし | 油っこく光沢あり 黄緑色の袴に包まれている | 細い柄の先で5枚の葉が均等に広がる 色:黄緑 縁:トゲ状の小さな鋸歯型で先端は細く鋭くとがっている 葉柄:成長すると緑から赤紫色に 産毛あり |
ヤマウルシ | 灰緑色 | 赤褐色・赤紫色 バラのトゲに似ている | 赤褐色・赤紫色の袴に包まれている | 色:赤褐色・赤紫色 形:卵型・楕円形で端が尖っている 軸:赤褐色・赤紫色 全体に軟毛あり |
ヤマハゼ | 成長するにつれ、灰白色から暗褐色に | なし | 細長い赤褐色の柄のついた小さな葉の集まり | 色:赤褐色 形:長楕円形で両端が尖っている 褐色の毛あり |
ハリギリ | まっすぐ 灰褐色 | 大型で鋭い 幹にまばらに生え、老木になるとなくなる | 薄緑色でふわふわな感じ 若緑色の袴に包まれている 幹や枝の先端から出る(幹の途中から出ることもあり) タラの芽とコシアブラを足したような感じ | 楓やもみじのような形状 色:緑色 縁:鋸歯型 枝先に集まってつく |
タカノツメ | 灰白色 | なし | つやのある黄緑色 黄緑色の袴に包まれている | 扇形に広がる3枚の小さな葉に柄が付いている 色:黄緑色 縁:毛状の微細な鋸歯型で、先端がとがっている 無毛 幹や短い枝の先端に束になってつく |
食用としてのタラの芽・コシアブラ
タラの芽やコシアブラが貴重な旬の山菜なのは言うまでもありませんが、実は上に挙げた4種類のニセモノも、食用不可というわけではありません。
アレルギー症状を引き起こすウルシオールを含んでいるヤマウルシやヤマハゼの芽も食べられるって言うの?
調べてみるとそうみたいですよ。
まぁ、ヤマハゼの芽を食べたことがあるって人は1人しか見つかりませんでしたが、ヤマウルシ(ウルシ)のほうは、栽培が盛んなところでは、タラの芽よりも好きだという人までいました。
私自身、ヤマウルシの芽なら食べたことがあるんですが、タラの芽よりも香りが強かったのを覚えています。
ただ、どちらも人によっては口の中や体表にかゆみの症状が出るようですので、心配な人はウルシ科の木の芽(ヤマウルシとヤマハゼ)は避けたほうがいいでしょう。
それ以外の2種(ハリギリ・タカノツメ)については、タラの芽やコシアブラと同じ調理法でおいしくいただけますし、ハリギリに至ってはキング&クイーンより美味という噂も!
おすすめの調理法(簡単レシピ)
タラの芽やコシアブラ(プラスよく似た木の芽)の調理法で、一番のおすすめはアク抜きの必要がない天ぷらです。
衣の材料(量はだいたいで…)
てんぷら粉(または小麦粉+片栗粉など):100gくらい
水:150㏄くらい(冷水じゃなくてもOK)
マヨネーズ:5cmくらい
作り方
- 衣の材料を混ぜ合わせる(ぐるぐるかき混ぜてもOK)
- 山菜を衣にくぐらせ、180度の油で揚げる
- 中に火が通ったら、いったん油から上げる。
- 数分後、天ぷらがアツアツじゃなくなったころに二度揚げする
これで次の日になってもカリッとサクッとした食感の天ぷらができます。
買ってきたお総菜のフライや天ぷらが冷めてしまったときも、オーブントースターや電子レンジより二度揚げ!
\お菓子を作るときもたいてい分量は適当!それでも不思議とおいしくできちゃう⁉/
注意事項
タラの芽は、新鮮な生のものも天ぷらもスーパーなどで簡単に手に入りますが、それ以外の木の芽はなかなか手に入りません。
タラの芽やコシアブラを探しに行くなら、ぜひハリギリやタカノツメも一緒に探してみるといいでしょう。
ただし、「誰も採ってなさそうだから」「私有地じゃなくて公有地だから」といって、勝手にどこかの山で山菜を採るのは違法行為にあたる可能性があります。
森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗とし、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
森林法197条
森林窃盗が保安林の区域内において犯したものであるときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
森林法198条
近くに民家があれば、土地の所有者がだれか聞いて、採取の許可を得るか、確認の取りようがない上に、どう見ても長年放ったらかしにされているような場所の場合は、刑罰を覚悟の上、自己責任で行動してください。
おまけ:Moo Mooを探せ!
下の3枚の写真にはタラの芽採りをする人物(Moo Moo)がいます。
あなたに見つけられるかな。
答えはこちら
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