今回ご紹介するのは、アメリカ人の子どもたちに日本語を教えていたときに実践した、遊んで学べるアクティビティと、そのアイデアをくれた絵本『さるのせんせいとへびのかんごふさん』です。
どんな絵本?
さるの先生とへびの看護婦さんのいるどうぶつ村の病院には、いろんな悩みを抱えたどうぶつがやってきます。優しくみんなを診てくれるさるの先生と、身体をはったへびの看護婦さんのお仕事ぶりに、何回読んでも笑いがもれちゃいます。
ぱっと見、子どもが描いたように見えなくもない絵は、色使いが鮮やか(個人的にはシャガールっぽい気がするんですけど)で、そのシュールさが話のおもしろさによく合っています。
32ページの大型本。
対象年齢は保育園から小学校の低学年くらいですが、大人も十分楽しめます。
どんなアクティビティ?
私はこのアクティビティをアメリカ人教師と二人で、アメリカ人の幼稚園児を対象に図書室でやりましたが、日本語がわかる子もわからない子も、積極的にアクティビティに参加していました。
できれば教室よりも大きな場所のほうが、アクティビティに適しています。また、教師(大人)の数は一人でも十分ですが、多いほうが子どもたちが楽しめます。
準備するもの
*このアクティビティの難点は、ちょっとばかし(かなり?)準備に時間がかかることです。
《へびの看護婦さんものさし(大)と(中)》
- 模造紙に、100-140cmくらい(中サイズは70cmくらい)の長さのへびの看護婦さんの絵を描いて色も塗る。色や洋服が同じなら、似てなくてもOK!大サイズの長さは一番背の高い子どもの身長+10cmくらい。できれば大サイズは2つ、中サイズは4つくらい用意したほうがいい。
- しっぽ(?)の端を”0”にして、へびの看護婦さんの顔の下まで1cmごとに小さい目盛、5cmごとに数字と大きい目盛をつける。(または100均かどこかで買ってきた巻き尺を貼り付ける。)
- 出来上がった絵を切り抜いて柱に貼る。
《へびの看護婦さんものさし(小)》
- 画用紙かコピー用紙に、25cmくらいの長さのへびの看護婦さんの絵を描いて色も塗る。
- しっぽの端を”0”にして、へびの看護婦さんの顔の下まで1cmごとに小さい目盛、5cmごとに数字と大きい目盛をつける。(できればすべての目盛に数字をつけたほうがいい。)
- 子どもの人数の半数くらいコピーを取って、絵を切り抜く。
- 出来上がった絵を何枚か床に貼る。
《身体測定の数値を記入するもの1》(数字が書ける年齢の子供対象)
- 人の絵(全身)を紙の中心に描き、頭、胸、足の横に数字を書き入れるための四角か横棒を引いておく。
- 用紙は子どもの人数分用意する。
または、
《身体測定の数値を記入するもの2》模造紙(数字が書けない年齢の子供対象だが、書ける子が使ってもいい。)
読み聞かせの時の遊び
日本人の子どもには全文を英語で、外国人の子どもには全文を日本語で読むのが理想です。
ただ、残念ながら、この本の英訳はないので、全文の英訳が手に入らないときは、単語(動物の名前)だけ英語にします。
- お話の中で動物の名前(例えばぶた)が出てくるたびに、絵を指さしながら声を大きくする。
- その1文を読み終わったら、もう1度絵を指さして動物の名前を繰り返す。そのとき、子どもにもその名前を言ってもらうように仕向ける。
遊び方1(数字の書ける子対象)
*ネタバレが含まれます。
- 子どもたちを4グループ・4か所に分ける。(人数が少ない時は2-3グループ・2-3か所でもOK。)
- 柱に貼ったへびの看護婦さん(身長)
- 中サイズのへびの看護婦さん(胸囲・頭囲・腕の長さなど)
- 小サイズのへびの看護婦さん(手・指の長さなど)
- 床に貼ったへびの看護婦さん(足や靴のサイズ)
- 看護婦さんものさしを使って、自分やお友達の身長、足の長さ、手の長さ、胸囲、頭囲を図り、用紙に記入する。
- それぞれのグループでの測定が終わったら、1→2→3→4→1→の順にすべての場所を回って、用紙にできるだけたくさん数字を書き入れる。
- 大人は身長のところで、測定を手伝うか、それぞれのグループを回って数字の読み取れない子や書けない子の手助けをする。
- 全員が全部の場所を回り終わったところで、先生は全員を集め、数人の生徒に用紙に書かれた数についての質問をする。
- 「○○ちゃん、背の高さの横には何って書いてある?」「△△ちゃんは?」(生徒が答える。)
- 「○○ちゃんは115で、△△ちゃんは121かぁ。これってどういうこと?」(子どもが数の大小を理解しているか確認。)
- 「じゃあ、ほんとに△△ちゃんのほうが背が高いか、背比べしてみよう」(数の大小を目でも確認。)
- 「じゃあ、一番足が大きいのは誰かなぁ」(子どもたちは互いの用紙を見せ合ったり、実際に足を合わせたりしてみる。)
というふうに、アクティビティの目的は子供たちに”数”を身近なものとして理解してもらうことです。
小学校の低学年にこの本を使う場合は、目盛と数字の関係についての学習になりますし、動物の名前を英語に置き換えてお話を読むことで、小学3年生から始まる外国語教育の準備にもなります。
また、3-4年生に使うのであれば、あらかじめ英訳しておいたお話を日本語を一切入れずに読み、ものさしの目盛も”cm(センチ)”ではなく”inch(インチ)”や”foot/feet(フィート)”にすると、単位の勉強にも使えます。(この年齢なら、子どもたちに自分専用のへびの看護婦さんものさしを作ってもらうのもいいかもしれません。)
遊び方2(数字の書けない子対象だが、書ける子も可)
ステップ1-3までは基本的に遊び方1と同じですが、4か所すべてに大人がいて、数値を子供たちのために書いてあげる必要があります。
ステップ4からは以下の通り。
- 子どもたち一人ひとりに模造紙の上に手足を広げて寝転んでもらい、等身大の人型をとる。
- 子どもたちは自分の人型を切り抜く。
- 数字が書ける子は、紙に書かれた数字を各パーツ付近に書き込む。
- 書き終わった子、書けない子は人型に顔や洋服などを描いて色を塗る。
この方法だと、まだ数が書けない・読めない年齢の子どもたちも、お話の中でへびの看護婦さんがやったことをまねるだけで楽しむことができますし、自分の身体について学ぶことができます。
最後に
私が子供だった頃(半世紀ほど前)、子供向けの本には「おもしろい」「楽しい」よりも「道徳的」なものが多かったように思います。
それはそれで素晴らしいのですが、今は「さるのせんせいとへびのかんごふさん」のように、大人も一緒に楽しめる絵本が数多く出版されています。
時間と空間に余裕があれば、読み聞かせだけで終わらずに、ぜひアクティビティにも絵本を使ってみてください。
*今後も不定期ですが、アクティビティに使える絵本を紹介していく予定です。