会議と聞いて、憂鬱に思う人は少なくありません。
そもそも「会議」とは「ある目的のために関係者が集まり、意見交換や議論を通じて物事を決定すること」です。
けれど日本では単にメンバー同士が話をするだけ、上司の話を一方的に聞かされるだけの会合を「会議」と呼んでいるような気がします。
実際、何も決まらないまま時間だけが無駄に過ぎていくような会議は会議とは言えません。
その点、私が以前働いていた「日本の中のアメリカ」の職場では、本来の意味での会議が開かれていました。
そこで今回の記事では、アメリカ式「仕事の効率化につながる有意義なインハウス会議のやり方」について紹介したいと思います。
Norm(ノーム)の導入
ここで言う「Norm(ノーム)」とは、会議のメンバーが守るべきルールのようなものです。
ノームには参加者一人ひとりのコミュニケーション能力を高め、チームビルディングに役立つという効果があります。
私が所属していたグループの会議では以下のようなノームを掲げていました。
- 時間厳守:会議は予定通りに始め、予定通りに終わらせる。
- PC持参。携帯やスマホの持ち込みは基本禁止。
- 会議中全員が1度は発言する。
- 傾聴:他者の発言を遮らない。
- 好き勝手に発言しない。発言したいときは手を挙げ、指名されるのを待つ。
- 他者を非難する発言は禁止。
- ポジティブな姿勢で積極的に会議に関与する:無駄話をしない。内職をしない。
- 会議には準備万端で臨む。事前準備を怠らない。
ところで、どれだけ素晴らしいノームでも、メンバーが守れない・守らない規則では意味がありません。
最大限の効果を得るためには、①全員が納得したノームであること、②毎回会議を始める際にノームをおさらいすることが必須です。
メンバーが変わったり、ノームがうまく機能していない時には見直しや改定も必要です。
また、ノーム違反を知らせるサインを用意しておくと、スムーズな軌道修正が可能です。
私のいたグループでは、黙ったままピースサインを掲げて合図していました。
メンバーの役割分担
会議の際、少なくとも①ファシリテーター、②タイムキーパー、③レコーダー(記録係)をあらかじめ決めておくと、進行がスムーズになります。
さらに会議ごとにそれぞれの役割を交代で担うようにすれば、メンバー全員の自己啓発にもつながりますし、責任感も生まれ、仕事に対するモチベーションが上がります。
ファシリテーター
「ファシリテーター」は「中立的な立場で円滑に会議を進行し、全体の意見を取りまとめてゴールに導く人」です。
緊張感が漂う会議ではメンバーから意見を引き出し、意見が対立するようなときには話が堂々巡りに終わったり、後々しこりが残らないように調停人的な役割も務めなければなりません。
大人数の会議では発言の順番を決めたり、メンバーを少人数のグループに分けて段階的に議論を進めるなど、臨機応変な対応も必要です。
その力量次第で会議の成否が決まると言ってもいいほど、ファシリテーターの役割は重要です。
ただ、1つ注意すべきなのが、上司と部下が混ざった会議の場合です。
きちんとノームに従ってくれる上司ならいいのですが、そうでないとファシリテーターの悩みの種になる可能性が大ですし、仕切りたがりの上司がファシリテーターになった日には生産性の高い会議は期待できないでしょう。
タイムキーパー
タイムキーパーの役割は、「アジェンダ通りに会議が進行するよう時間を管理すること」です。
まず、会議の進行状態を見て、その議題に費やせる残り時間を知らせます。その際「あと3分」のように声に出すより、ボードに数字を書いたり、指を立てて黙って伝えるほうが会議の妨げになりません。
次に、割り当てられた時間の終わりを宣言します。たとえ活発な話し合いの途中だろうと、予定通りに終わらせることが肝心なので、ここでは敢えて音や声で合図します。
レコーダー(記録係)
レコーダー(記録係)の役割は「文書を作成し、会議に関するありとあらゆる記録を取ること」です。
詳細については以下の項で説明します。
Agenda(アジェンダ)&Minutes(ミニッツ)の共有
「Agenda(アジェンダ)」はよく「議題」や「議事日程」と訳されます。一方「Minutes(ミニッツ)」は日本語の「議事録・会議録」にあたります。
通常アジェンダにはアジェンダ用のフォーム、ミニッツにはミニッツ用のフォームを使う組織が多いと思いますが、私のいた組織ではアジェンダとミニッツを1つの文書にまとめていました。
なお、資源と時間の無駄を省くために文書の印刷・配布はせず、GoogleドキュメントやWordで文書を作成し、GoogleドライブやMicrosoft365のOneドライブといったクラウド上に保存していました。
従って、ここでの「共有」は「参加者がファシリテーターからメールで保存先のURLを受け取ること」を意味します。
ちなみにアジェンダについては少なくとも最終版を会議前日の正午までに、ミニッツについては会議翌日中に関係者全員と共有することで、会議だけでなく、その後のアクションを含む業務全体の効率化を図ることが期待できます。
アジェンダ&ミニッツの特徴と使い方(テンプレートコピー付き)
*「会議のアジェンダ&ミニッツ」(Googleドキュメント)テンプレートのコピーが欲しい人はこちらから。
- 日時・場所:レコーダー事前記入。
- 参加者名:あらかじめ参加予定者名を入れておき、当日欠席者があれば名前の上に横線をひく、予定外の参加者があれば追加記入する。レコーダー記入。
- ファシリテーター・タイムキーパー・リコーダー:前回の会議の最後の議題として、次回の3役を決めておく。レコーダー事前記入。
- 準備:会議に持参してほしいもの、会議までに目を通しておいてほしい資料について、各議題の担当者が各自事前記入。
- 目的:会議の目的、または組織やプロジェクトの最終目的を明確にすることにより、参加者の会議やプロジェクトへの関心が高まり、積極的な関与や貢献が見込まれる。ファシリテーター事前記入。
- ゴール:ゴールが明確でないと到達度が図れず、達成感が生まれない。ファシリテーター事前記入。
- ノーム:会議の開始はノームのおさらいから。レコーダー事前記入。
- 議題と議論・時間・重要度・担当
- 議題・時間・重要度・担当:
- まず担当者が必要事項(時間については何分必要か)を事前に記入する。(記入日の期限あり)
- 重要度や必要な時間を見て、ファシリテーターが優先順位順に、議題他を並べ替える。時間(何時から何時まで)も計算して追加記入。
- すべての議題が会議の時間内に収まらない場合は、次回に回すか、新たな会議を提案する。ファシリテーター判断。
- 議論:当日の決定事項や議論の概要は議題と同じボックスの中にレコーダーが記入。
- 議題・時間・重要度・担当:
- タスク・課題・担当・期限:会議中に終わらせることができずに課題として残ったもの、新たに追加されたタスクをレコーダーが記入。会議が終了する前に締め切りと担当を明確にしておかないと、結局誰もやらなかったり、先延ばしにされるので要注意。
- 次回の予定:すべて会議中に確定させ、レコーダーが記入。
文書関係のタイムライン(まとめ)
資料の事前共有
会議に必要な資料を事前に共有しておくと、①会議の内容が理解しやすい、②あらかじめ自分の考えをまとめておける、③会議の時間を効率的に使えるなど、個人にとってもグループ全体にとっても大きなメリットがあります。
テクノロジーの有効活用
前にも書きましたが、文書をクラウド上で共有すれば、時間も経費も節約できます。
それだけでなく同時に複数のメンバーが1つの文書にアクセスできるので、効率的に作業が進められる上、文書の加筆・訂正も簡単です。
また、手元にPCさえあれば、対面の会議だろうとオンライン会議だろうと、プレゼンもスムーズに行えます。
もちろんどちらの形式の会議でもプレゼンに使用するツールの操作方法に慣れておく必要がありますし、オフィスツールや文書の共有の仕方を学ぶ必要もあります。
中には「テクノロジーはちょっと…」というメンバーがいるかもしれませんが、レコーダーの役割を果たすためにやり方を覚えて使ってみたら、あまりの便利さに驚くことでしょう。(私の元同僚には携帯すら満足に操作できなかったのに、いつの間にかGoogle教育者認定資格を取った人までいました。)
会議の定例化
会議は、組織の年間計画の中に定期的に組み込んでおくことをお勧めします。
例えば「毎月第1月曜日の午後1時から4時」のようにあらかじめ日時が決まっていれば、仕事でもプライベートでもその他の予定を立てるときにダブルブッキングをせずに済みます。
逆に言うと、やむを得ない場合を除いて、定例の会議のある日時には他の予定を入れないようにすべきです。
また、他の仕事が忙しいからと会議の日時を変更することもお勧めしません。1度変更してしまうとその後もずるずると変更するようになり、他の予定とかち合ったり、結果的に組織全体の仕事の効率や生産性を落とす可能性が高くなるからです。
なお、議題が少ない・会議をする必要がない場合は、浮いた時間を自分の仕事に回したり、おろそかにされがちなチームビルディングなどの研修に振り替えるといいでしょう。
まとめ
組織内での会議を有意義なものにし、確実に仕事の効率化につなげるには、以下の6つのポイントを押さえておくことが重要です。
- ノームの導入
- メンバーの役割分担
- アジェンダとミニッツの共有
- 資料の事前共有
- テクノロジーの有効活用
- 会議の定例化
実はこの6つに加えてもう1つ、会議を有意義なものにする秘策があります。
それは誰でも好きな時に口にできる飲み物やちょっとしたおやつを用意することです。
間食には「イライラがおさまる」「緊張が和らぐ」「余計なことを言わずに済む」「脳に刺激を与える」など様々な効果があります。
飴玉1つで会議が円滑に進むのであれば安いものです。
上司のみなさん、たとえ自分が参加しなくても、会議には飲み物やおやつを差し入れをよろしくお願いします!
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