お盆や年末年始の風物詩に、たくさんの人でごった返す空港や駅、何キロにもわたる高速道路での渋滞があります。
一見すると、ここ何十年も変わっていない帰省ラッシュ。けれど、帰省する側もされる側も、心の中は以前ほど穏やかではないようです。
今回の記事では、小学生以下の子ども連れで帰省する側・される側のストレス要因、ストレスに煩わされないための対策、帰省しないことのデメリットについて紹介します。
この記事は、三世代の真ん中にいる帰省する側の親世代に向けたものです。
里帰り出産を検討中の人にも参考になると思います。
帰省ストレスの要因
お金(出費と節約)
帰省には、帰る側にも迎える側にも金銭的に負担がかかります。
出費 | 節約 | |
---|---|---|
帰省する側 | 旅費 お土産代 | 電気・ガス・水道料金などの光熱費 食費 |
帰省される側 | 光熱費 食費 | 特になし |
帰省する側は自宅から帰省先までの移動費用を出さなければなりません。
交通手段にも寄りますが、移動距離が長ければ長いほど、家族の人数が多ければ多いほど、かかる費用も高額になります。
ただ、いったん帰省してしまえば、滞在中の生活費は浮きます。
一方、帰省される側は、帰省客がいる間中、通常時よりも生活費の負担が増えます。
ひと昔前なら、帰省客から渡される盆礼や御年始(御年賀)が出費の足しになっていましたが、最近ではこの風習も廃れつつあるようです。
気疲れ
家事
良かれと思ってしたことで迷惑がられたり、邪魔になるからと手を出さずにいたせいで「何もしない」と悪く言われたり、相手に気を遣ったせいで関係がこじれたという話は少なくありません。
特に家事に関しては、役割分担とやり方(習慣)や好みの違いがストレスの引き金になります。
また、たとえ仕事を分担できたり、一緒に作業することができたとしても、世代によって、個人によって物事のやり方や好みが違うと、慣れないことやものに我慢を強いられる人が出てきます。
例えば、掃除や洗濯を毎日する派と1週間分まとめてする派、乾燥機を使うか天日干しするか、肉中心の食事対魚や野菜中心の食事など、習慣や好みの違いを数えたりきりがありません。
時間の過ごし方
「せっかく帰ってきたのに、子どもたち家族はほとんど家にいない」
「家にはいるけれど、スマホやタブレットでみんなそれぞれに何かやっていて、話もしない」
「ここはタダで泊まれるホテルや旅館じゃない」
と言う祖父母世代。それに対して、
「実家にいてもつまらない」
「話が合わないし、興味の対象が違う」
「ホテルや旅館ならもっと好き勝手できたのに」
と感じる子ども世代・孫世代。
他のストレス要因とも相まって、最近では休暇にならない帰省をやめて、気楽な家族旅行を楽しむ若い世代が増えています。
ストレス予防策
帰省する側・される側、どちらにも言い分はあるでしょう。けれど、お互いに歩み寄らないかぎりストレスはなくなりません。
そこで提案したいのが、帰る側主導の帰省に関するルール作りです。
帰省に関するルール(参考)
ルール決めは帰省に先立って自分の親・兄弟とする
帰省といっても、自分の実家に帰る場合と、配偶者の実家(義実家)に帰る場合の2パターンがあります。
実家への帰省ルールについては自分が、義実家への帰省ルールについては配偶者に話し合ってもらうほうがスムーズです。
なお、実家に兄弟姉妹(とその家族)が同居して親の面倒を見ている場合は、親とではなく、兄弟姉妹と話し合うほうがいいでしょう。
ただし、中には言いにくいこともあるかもしれませんし、もめることも考えられます。
最低でも帰省の1か月以上前に、電話かメールで話し合いをするのがおすすめです。
帰省の時期や滞在期間を調整する
帰る側にとっては長期のお休みがとれるお盆やお正月がベストな帰省時期でしょう。ただ、迎える側にとっては必ずしもそうとは限りません。
ほかに兄弟姉妹いて、その家族も同じころに帰省するとなると、実家はぎゅうぎゅうづめになりかねません。兄弟姉妹がいる人は、兄弟姉妹のうち、だれが、いつから、どのくらい滞在するか事前に打ち合わせ、できるだけ複数の家族の帰省がかぶらないように計画を立てましょう。
例:
- ある年は姉家族がお盆、弟家族がお正月に帰省し、その翌年は弟家族がお盆、姉家族がお正月に帰省する
- お盆やお正月を避けて、孫世代の春休み中や敬老の日前後のシルバーウィークに帰省する
孫世代にとってはいとこに会える唯一の機会かもしれませんが、祖父母世代は自分の子どもと孫のほかに、たいていは子どもの配偶者である赤の他人も迎い入れることになります。
気心の知れている相手ならともかく、祖父母世代の精神的な負担は相当なものでしょうし、自分の家族が、兄弟姉妹の配偶者たちとの間で同じように気疲れするかもしれません。
もしかすると兄弟姉妹のうち、誰か一人の子どもだけひいきされているように感じる可能性もあります。
また、たとえ帰省するのが自分たち家族だけだからと言って、1週間~10日も滞在された上に、ベビーシッター代わりに使われると、祖父母世代のほうは自分たちの生活のペースを保つことができません。
帰ってくる側は気づいていないかもしれませんが、実は子どもたちが帰った途端、疲れて2~3日動けなかったという高齢の親御さんたちが少なからずいるのは紛れもない事実です。
金銭的な負担を分配する
迎える祖父母世代が、夫婦とも現役バリバリで働いているならともかく、年金生活を送っているような家庭に帰省するときは、帰省する側持ちで何度か外食に連れ出したり、一緒に買い物に行くのはどうでしょうか。
三世代揃っての外食や買い物は、単に金銭的なストレスを解消するだけでなく、一緒に楽しい時間を過ごすことにもつながります。
なお、子ども世代にそれほど余裕がないようなら、ルール決めの際に正直にそう伝えて、あえて帰らないという選択もできます。
もちろん中には「お金の心配はいらないから会いに来てほしい」「代わりに自分たちが旅行がてら会いに行く」という祖父母世代もいらっしゃるかもしれません。
家事の役割分担を決める
「船頭多くして船山に上る」と言いますが、誰が何をするのか決まっていないと、望む場所にはたどり着けません。
食事の準備・片付け、掃除、洗濯といった家事は、いつ、誰が、何を、どんなふうにするのかを決めておくことが大切です。
例えば、「滞在中の食事は1日おきに違う人が作る」というルールにしておけば、好みの違いもそれほど苦にならないのではないでしょうか。
一緒に無理なく楽しめるものを用意する
祖父母世代と孫世代が楽しい時間を共有できるかどうかは、真ん中の世代の働きかけにかかっています。
スマホやオンラインゲームがなかったころの遊びを祖父母世代が孫世代に伝授したり、逆に孫世代がやっているオンラインゲームのやり方を祖父母世代に教えるよう、うまく先導してあげてください。
甥たちが小学校に上がる前のことですが、うちの父親は孫たちを連れてカブトムシの幼虫を探しに行ったり、竹馬を作ってやったりしていました。
帰省しないことのデメリット
帰る側にとって帰省ストレスに煩わされないいちばん簡単な方法は、帰省しないことです。
ただ、金銭的余裕があるにもかかわらず帰省しないと、高齢者と子どもが触れ合うことで得られる様々なメリットも得られずじまいに終わってしまいます。
子ども(帰省する側)にとってのメリット
子どもにとって帰省期間中は社会性を育むチャンスです。
- お年寄りを敬ったり、思いやる気持ちが芽生える
- コミュニケーションスキルが上達する
- 親とはまた違う愛情を得られる
高齢者(帰省される側)にとってのメリット
高齢者は、自分の存在価値・意義を再認識できます。
- 孫に会えたことで喜びや刺激が得られる
- 生きがいを感じ、意欲が向上する
最後に
今回は帰省する側の親世代を対象に、
- 帰省ストレスの要因
- ストレス予防策
- 帰省しないことのデメリット
について紹介しました。
ストレスがたまるから帰らないことを選択するのは簡単です。
けれど、迎える側の私からすると、子どもたちが部活や習い事で忙しくなって一家そろっての帰省が難しくなる前に、せめて年に1度くらい孫の顔を見せに実家に帰ってあげてほしいです。