日本には人生の節目を祝う文化があります。
お七夜、お宮参り、お食い初めに初節句。
七五三、成人式。
入園・入学、卒園・卒業、就職。
結婚、出産。
還暦、喜寿、米寿…。
私たちは生まれた瞬間から生涯を通じて、ある一定の段階に達したことを祝い、祝われる機会に事足りません。
今回の記事では、そういったお祝いシーンの中でも、対象が子どもだった場合のお祝いについてお話します。
*ここで言う「子ども」は、社会人になるまでを指します。
実際、子どものお祝いは、どれも健やかな成長を願うためのものです。
しかし、子どもの年齢やお祝いの種類、その子供が身内かどうかによって、贈るものは変わります。
また、派手にお祝いをする地域もあれば、周囲に流されず、あくまで自分たち流を貫く家庭もあります。
個人的には、相手に余計な気を遣わせない限り、何を贈るかは贈る側の気持ち次第だと思っていますが、一般的にはどんな形でのお祝いがふさわしいとされているのでしょうか。
守ったほうがいいマナーや、避けるべきタブーがあるのでしょうか。
お祝いのマナーとタブー
お祝いの気持ちも、表し方1つでかえって失礼になったり、うまく伝わらないことがあります。
- 贈る相手の親が負担に感じない金額、または品物にする
- 現金を贈る場合、
- 基本的には紅白蝶結びのご祝儀袋に入れる
*紅白蝶結び:ほどけて何度でも結び直せる→お祝い事は何度あってもいい- ご祝儀袋はお祝いの金額に合ったサイズのものを選ぶ
- お祝いの席に呼ばれていない場合や金額が多くない場合は、印刷された略式のご祝儀袋でOK
- 表書きは筆(筆ペン)を使い、濃く鮮やかに楷書で書く
- 名目の文字数は4文字は避ける
(例)✕ 御入学祝 vs. ○ 御入学御祝 - 送り主の名前は名目より少し小さめに書く
- お札は表側(肖像が描いてある面)が包みの表側に向くように入れる
*地域によって違いあり - 新札を用意する:
*新札が手元にない場合は、可能な限りアイロンでしわを伸ばす
- ご祝儀袋は袱紗に包み、渡すときに袱紗から取り出し、相手側に正面がくるようにして渡す
- 基本的には紅白蝶結びのご祝儀袋に入れる
- 品物を贈る場合、
- 大きなもの、かさばるものは親御さんに事前に了承を得たうえで贈る
(例)ひな人形・学習机など - 子どもの好みに合っていて、日常的に使えるものを贈る
*ただし、2つ以上あっても困らない、または複数あるほうが役に立つものに限る - 手渡しの際は外のし、発送する場合は内のし
- 大きなもの、かさばるものは親御さんに事前に了承を得たうえで贈る
- (可能であれば)贈るのに最適なタイミングを選ぶ
必ずしも上述の通りにしなければならないわけではありませんが、こういったお祝い事に関するルールは知っておいて損はないでしょう。
ご祝儀袋って、どんなに素敵でも最後はゴミになってませんか?
イベントシーン別に見る子どもへのお祝い
1歳までのお祝い
子どもが1歳になるまでのお祝いは、基本的には内々の家族だけで行われます。
お祝いの席に呼ばれるのも、たいていは同居している家族と子どもの祖父母くらい(ご祝儀は5,000~1万円程度が相場)なので、それ以外の親族や両親の友人は、お呼ばれしない限り、特にご祝儀を用意する必要はありません。
ただ、地域によって様々な慣例があるので、心配な人は周りの人に合わせるといいかもしれません。
なお、お祝いに呼ばれる呼ばれないにかかわらず、誕生から1歳までのところで、お金ではなく何か記念になるものをプレゼントしたいと思っているなら、「手形・足型セット」がおすすめです。
子どもへの直接的なお祝いではありませんが、1歳までの子どもに関するお祝いには、誕生そのものを祝う「出産祝い」があります。
その際、お祝いギフトとしてベビー服を贈る人がいますが、ほとんどが新生児用のため、結局1度も袖を通すことなく箪笥の肥やしになったという話をよく聞きます。
1歳までのお祝いにギフトを贈ろうと思っているなら、6か月以上のサイズのベビー服のほうが逆に喜ばれるかもしれません。
お七夜
お七夜は、生後7日目の夜に子どもの健やかな成長を願って行われるお祝いです。
命名書に名前を書いて、同居する家族にお披露目をする命名式の日でもあります。(近場であれば、同居していない子どもの祖父母が呼ばれることもあります。)
お七夜は長年、父親の実家で行われてきましたが、核家族化が進んだことや里帰り出産も多いことから、近年は子どもと母親の体調を考慮して、両親(+兄弟姉妹)だけや母親の実家で祝われることも多くなっています。
また、わざわざ祝い膳を囲むことも少なくなっているようです。
お宮参り
お宮参りとは、生後約1か月ごろ、子どもの無事な成長を産土神に感謝して報告する行事のことです。
たいていは両親と父方の祖母とともに神社に参拝し、健康と長寿を願ってご祈祷をしてもらいます。
*ご祝儀ではありませんが、ご祈禱の際の初穂料は同行した祖父母が払うのが慣例です。
お宮参りは、初着やベビードレス代、写真撮影など、何かと物入りです。
お食い初め
お食い初めは、生後100日目を記念して行うお祝いで、百日祝いとも呼ばれています。
生涯食べることに困らないようにという願いをこめ、初めて箸を使って子どもにお魚を食べさせる真似をすることから、箸揃えと呼ばれることもあります。
以前はお祝いの席を設け、一家の長である祖父(母)が、最初に子どもの口に箸を持っていく習わしでしたが、今日では、家族水入らずで自宅でささやかにお祝いをする家庭が増えています。
また、生後100日というと乳歯が生え始めるころでもあるので、地域によっては歯固めの儀式を同時に行うところもあります。
初節句
初節句は、赤ちゃんの健やかな成長と厄除けを願う行事です。
通常、女の子は3月3日の桃の節句、男の子は5月5日の端午の節句にお祝いしますが、誕生からあまり日がたっていない場合は、翌年の節句にお祝いすることが多いようです。
これまで初節句のお祝いとしては、特に子どもが初孫にあたる場合、祖父母から男の子なら鎧兜やこいのぼり、女の子ならひな人形を贈るのが主流でした。
しかし、現代の家事情を考えると、設置や保管が大変なこともあり、今では必ずしも喜ばれる贈り物とは言えなくなってきています。
もしそういった場所を取る飾り物を贈りたいのであれば、必ず子どもの両親の了解を得ましょう。それも節句のかなり前に話を通さないと、配達が遅れ、主役の家族は飾りを楽しむ間もなく片付けに追われる羽目になります。
「雛人形はできるだけ早く片付けないと、娘が縁遠くなる」と言われています。
私が50代で未婚なのは、「親がさっさとひな人形を片付けなかったから」ということにしてあります。
ちなみに飾り物を贈らない場合は、祖父母についてのみ、5~10万円程度のご祝儀を包むところが多いようです。
七五三
七五三は、子どもの成長を祝ってその土地の守り神である氏神様に参拝する伝統行事です。
その名の通り、子どもが3歳、5歳、7歳のときに祝いますが、性別によってお祝いの年齢や儀式の名前が異なります。
3歳 | 髪置きの儀 | 男女児 |
5歳 | 袴着の儀 | 男児 |
7歳 | 帯解きの儀 | 女児 |
本来、七五三の日取りは11月15日とされてきましたが、最近は10月の終わりごろから11月の週末や吉日を選ぶ家庭が増えています。
七五三のお祝いの目安は以下の通りです。
両親との関係 | ご祝儀 |
近しい親族 (祖父母・叔父・叔母) | 1万~5万円 |
それ以外の親族 | 1万~3万円 |
友人・知人 | 5,000~1万円 |
地域によって祖父母が七五三の晴れ着を用意するところもありますが、1度しか着ないであろう晴れ着に大金を費やすより、そのお金で晴れ着をレンタルし、プロに写真を撮ってもらうほうがいいという親御さんが増えていると聞きます。
入園・入学・就職
両親との関係 | 幼稚園・保育園 | 小学校 | 中学校 | 高校以上 |
近しい親族 (祖父母・叔父・叔母) | 5,000~1万円 | 1万~3万円 | 1万~10万円 | 1万~30万円 |
それ以外の親族 | 3,000~5,000円 | 3,000~1万円 | 5,000~3万円 | 1万~3万円 |
友人・知人 | 3,000~5,000円 | 3,000~1万円 | 5,000~1万円 | 5,000~2万円 |
- 入園・入学・就職祝は、子どもの年齢が上がるにつれ、金額が上がる傾向にあります。
- 受験に合格して入園・入学に至った場合や義務教育以上の学校に進学した場合も、ご祝儀が高めになっています。
- 相手がよく知っている友人のお子さんの場合は、金銭ではなく、品物を贈る人も多いです。(私の周りにも入園や小学校入学のお祝いに、手作りのシューズバッグやお弁当バッグをもらって重宝したという人がいました。)
- 高齢者の中に、就職祝いに名前やイニシャル入りの高級ペンや万年筆を贈る人がいますが、ほぼほぼ喜ばれないのでおすすめしません。もし社会人としての自覚を促すためのギフトであれば、名刺入れとか財布を贈ってあげるほうがかえって使ってもらえるでしょう。
- かつては入学祝として人気のあった腕時計も、高級品やブランド物でないかぎり、スマホ世代の子どもには喜ばれないかもしれません。
入園・入学・就職祝の相場はあってないようなものです。
相場はあくまでも相場と割り切って、贈る側に無理がない範囲で包むほうが親御さんに気を遣わせなくて済むのではないでしょうか。
卒園・卒業
卒園・卒業のご祝儀の相場は、ほぼ入園・入学・就職祝いと同程度と考えて差し支えありません。
ただし、卒業の先に入学や就職が控えている場合は、入学・就職祝いを優先するので、卒園・卒業のご祝儀は必要ありません。
成人式
両親との関係 | ご祝儀 |
近しい親族 (祖父母・叔父・叔母) | 1万~10万円 |
それ以外の親族 | 1万~3万円 |
友人・知人 | 5,000~1万円 |
幼いころにもらったご祝儀は、かなりの確率で親の手に渡り、必要経費(写真撮影、衣装代など)に充てられるか、子どもの名前で貯金されます。
しかし20歳ともなると、ご祝儀は直接子ども本人に手渡されるので、品物よりも何でも好きなものが買える金銭を渡すほうが喜ばれます。
ただ、成人式とは本来、晴れ着を着て地方公共団体が主催する式典に参加する日ではなく、子どもから大人への通過儀礼です。
他人はともかく、近しい親族(とりわけ祖父母)の場合、大人としての自覚を持ってほしいのであれば、子ども(孫)にとってのATMに成り下がらないよう気をつけましょう。
2018年、民法の定める「成年年齢」を20歳から18歳に引き下げる「民放の一部を改正する法律」が成立しました。
これにより、2022年4月1日以降は18歳以上が成年の対象となりましたが、今のところ圧倒的多数の地方公共団体が、成人式の対象年齢を20歳のまま継続するという意向を示しています。
最後に
例えば誕生日やお年玉など、人生の節目となるイベントの日以外にも、子どもにご祝儀やお祝いのギフトを贈る機会はたくさんあります。
私の叔父は、めったに会えないからと言って、妹の子どもたち(叔父にとっては姪の子ども)が実家に来るたびにお祝いを渡しています。
子どもへのお祝いに際して、昔からのしきたりに敬意を表し、相応のご祝儀を渡すべきと考えること自体は間違っていません。
しかし、一番の贈り物は、その子どもの心身共に健やかな成長を親御さんとともに祈り、喜ぶ気持ちだと、私は思っています。