実りの季節、愛犬ココを連れて裏山や農道、公園を散歩していると、たくさんのきのこや木の実に出くわします。
ココは「ごちそう発見!」とばかりに、そのうちのいくつかを食べるか、こっそりと口の中に隠してうちに持って帰りますが、果たして同じことを私たち人間がやっても大丈夫なのでしょうか。
今回は、2024年の秋にココと私が出雲の里山で見つけたきのこと木の実を紹介しながら、
- 採ってもいいきのことは
- 食べるか否か
- 食べる以外にどんな楽しみ方があるか
について説明します。
2024年に見つけたきのこと木の実
きのこ・木の実の名前(写真のキャプション)は、
- 赤字:有毒
- 半分赤字:食毒不明・弱毒・有毒の可能性あり・食べないほうがいい
- 黒字:食用可・食べられなくはないが、食べるほどのものではない
のように色分けしてあります。
きのこ
木の実
*ムカゴは、正確にはいも類の茎や葉の付け根にできる小さな球芽で、実ではありません。
採る?採らない?
きのこは菌類、木の実は植物の種で、どちらも森林の産出物です。
そこで、森林の産出物の採取に関する法律を調べてみると、「森林法」「自然環境保全法」「自然公園法」「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」「文化財保護法」等があり、
- 国立公園や国定公園の特別保護地区内
- 私有地や共有地
では採取が制限されています。さらに、
- 国立公園や国定公園の特別地域内において、環境大臣が指定する動植物
- 国や地方自治体が指定した天然記念物や希少野生動植物
なども、許可なく採取することはできません。
日本の森林は、大部分が私有地や共有地、国立公園や国定公園です。
つまり、法的にきのこや木の実を採取してもいいのは、①国有地や公有地内で、上記のような禁止する法律の適応外か、②国であれ、地方公共団体であれ、個人であれ、土地の所有者の許可を得たところに限られます。
また、絶滅危惧種は上述の保護対象生物に指定されていなければ、採ったところで法的に罰せられることはありませんが、倫理的に採るのは控えるべきではないでしょうか。
ちなみに、しょっちゅうどんぐりを失敬しているココも飼い主である私自身も、これまでどこからも誰からも責められたことはありません。
おそらく里山近くの公園や道端に大量に生えている、または落ちている木の実やきのこは、採ったところでとがめられることはないと、個人的に思います。
食べる?食べない?
きのこ
日本にはだいたい4000~5000種類のきのこがあると言われています。
食用に適しているのはそのうちの約100種類ほどで、人体に害を及ぼす毒きのこは200種類以上が知られています。
間違ったきのこあるある:
- 縦に裂けるきのこは食べられる。
- 火を通したり、塩漬けにすれば、毒がなくなる。
- 鮮やかな色のきのこは有毒で、地味な色のきのこは安全。
- 匂いがよければ、食べられ、臭ければ食べられない。
- 昆虫等が食べているきのこは人間が食べても大丈夫。
それ以外のきのこについては、ほとんどが何というきのこなのか不明なため、食用可能かどうかなど、たとえきのこの専門家や研究者でもさっぱりわからないのが実情です。
2024年の秋に私が見つけたきのこたちも、Googleレンズに写真をアップして何なのか見極めようとしましたが、似たようなきのこが多すぎて、自信をもって「コレだ!」と言えるきのこはごくわずかでした。
きのこを見極めるポイント:
- カサ
- 条線
- 付着物
- ヒダ
- ツバ
- 柄
- ツボ
きのこの見極めには、それぞれのパーツのサイズ、色、形、模様、粘性、模様、ササクレ、匂い、疎密度、分泌物、触感などのほか、発生の仕方や場所も調べる必要があります。
また、発生したばかりのとき(幼菌)と数日後(老菌)で姿かたちがまったく変わってしまうきのこがあるため、1本しかない場合はさらに注意が必要です。
ということで、食べても大丈夫なきのこは確実に種名が特定できた食用可のきのこだけです。
きのこに関してずぶの素人で、食べるものに困っていないのなら、むやみやたらに見つけたきのこを食べないほうがいいというのが私の見解です。
でも、これって間違いなく日本版ポルチーニだと思うんだよなぁ。
周りにきのこに詳しい人はいませんか?
どうしても自分で食用可能なきのこを採って食べたいという人は、日本特用林産振興会が認めたきのこアドバイザーに相談するといいかもしれません。
またはそういった専門家が添乗するキノコ狩りツアーに参加するという手もあります。
\キノコ狩りツアーに参加したい!/
木の実
今回私が見つけた木の実の中で食用可能なのは、以下の12種です。
- 柴栗
- 銀杏:熟した実に直接肌が触れるとかぶれる。食用なのは硬い殻の中の「仁」と呼ばれる部分
- アケビ:生食可
- ムカゴ:ヤマノイモの球状の芽
- ムベ:生食可
- ガマズミの実:生食可。完熟していないとすっぱい
- サルトリイバラの実:生食可。色づき始めのころはすっぱく、赤く熟すとスカスカになる
- スダジイ:生食可
- ヒサカキの実:生食可。熟した黒い実は苦みが強い
- ツバキの実:食べるというよりエキスや油を抽出
- トウネズミモチの実:有毒で食中毒を起こす危険ありとする説もある
- キズタの実:食べてもまずいという説と有毒で舌がしびれるという説がある
スギの実に関しては、口に含み、エキスをしゃぶった後食べる行為を1日5~6回、数日間続けて花粉症を直したという話があります。
松ぼっくりは松の実だから、松の実がとれるだろうと思われるかもしれませんが、日本の里山に多いアカマツやクロマツの松ぼっくりには食用可の松の実は入っていません。
木の実は素人でも割と簡単に種類を確定できるので、有毒か食用可か、食用可の場合、どんな調理法が向いているのかもわかりやすいと思います。
ただ、トウネズミモチやキズタの実のように、中には有毒かどうかの見解が分かれるものもあるので、ネット検索をする際には複数の記事を参照したほうがいいでしょう。
また、食べられはするけれど、わざわざ食べるほどのものでもなければ、野生動物のために残してあげましょう。
間違った木の実あるある:
- 虫や鳥が食べているものは人間も食べられる。
- 生だと有毒でも、加熱することで毒素が消える。
- 違いが在来種か外来種かだけなら、毒性も同じ。
採る・食べる以外の楽しみ方
写真撮影
みなさんは現在、マツタケが日本の環境省のレッドリストで「準絶滅危惧」に分類されているのをご存じでしょうか。
だから「採るな・食べるな」とは言いませんが、明らかに生物の中には生息地を失い、生育量が激減しているものがあります。
そこで、特にきのこはSDGsの観点からも採るのではなく、撮るのを楽しみませんか。
写真を撮ることのメリットには、以下のようなものがあります。
- データの収集・保存:見つけた日・場所等を記録しておくことで、自然破壊または保全の実情を知ることができる
- 情報発信:ネット上に写真をアップすることで、種の特定や新種の発見につながる可能性あり
- 臨時収入:フリーの素材をダウンロード・アップロードできるサイトで撮った写真を販売する
- 私は販売する代わりに、当サイトの「写真素材」で植物の写真が無料でダウンロードできるようにしています。(今のところ、きのこの写真はあまり載せていませんが…。)
スマホなら持ち運びも簡単ですし、今はかなり上質の写真が撮れますよ。
クラフト制作
食べるのに適さない木の実は、ガーランドやリースといったクラフトの材料として使えます。
自分でクラフトの制作するもよし、フリマサイト等で素材として販売するもよしです。
ちなみに私は「まなまなCraft」でいくつか木の実を販売しています。(在庫は家にたくさんあるんですが、ほとんどアップしていない無精者です。)
なお、クラフトの素材として使う場合、採ってきたそのままを使うのはおすすめしません。
例えば、サルトリイバラやガマズミの赤い実やトウネズミモチの黒い実などはドライフラワーに、ドングリや松ぼっくり、スギやヒノキなどは1度熱湯消毒し、しっかり乾燥させてからでないと、もちが悪くなったり、カビが生えたり、虫が湧いたりします。
自分でリース等を作るときは、グルーガンで好みの木の実を土台に貼り付けるのですが、土台は段ボールで作ってもいいですし、100円ショップなどで買うこともできます。すべて自分が採取した自然のものを使いたいという人は、サルトリイバラのつた(とげ注意)もおすすめです。
栽培
残念ながら、私が路上で見つけたアケビとムベは腐っていて食べることができませんでした。
食べごろの実も、頭上のはるか彼方に1つ2つポツンとあるだけです。
そこで、腐った実を自宅に持ち帰って、いくつかはプランターに植え、いくつかは庭と裏山のあちこちに投げ入れておきました。
子どものころは山の中にサトイモ畑があって、そこに行く途中、よくアケビを採って食べていました。
それから約50年。今では山の畑をだれも作らなくなってしまい、周りの木々に侵食されて、その道がどこにあるかもわかりません。
だからこそ、再び野生のアケビやムベが復活するのを楽しみにしています。
最後に
秋は、1年の中でも戸外でいちばん過ごしやすく、自然の恩恵を感じられる季節です。
たくさんの人たちがおいしい空気と美しい景色を求めて、里山付近に繰り出します。
けれど、近年のきのこ狩りブームも手伝って、中には自然を愛でるだけにとどまらず、許可なく他人の土地に侵入し、見つけたきのこや木の実を採取して、食べようとする人もいます。
これは違法というだけでなく、下手をすると人命にもかかわる危険な行為です。
野生のきのこや木の実は、
- 採っても問題にならない場所を選んで、根こそぎ採るようなことはしない
- 安全が保障されたものだけを口する
- できれば採る以外の楽しみ方を見つけ、SDGsに貢献する
ようにしてもらえると、田舎の住民としてはありがたい限りです。